「一」を産むのは苦しいことです。得てして文筆家というのは神経衰弱の気質に苦しむものだと存じます。しかし、そこに九十九の活力を注ぐ相棒が居ればどんなにか素晴らしいでしょう。一の陰鬱と九十九の活力、合わせて百物語。人間このぐらいのバランスでいたいなぁと思うところです。 大変爽やかな読後感でした。先生もどうかご自愛下さい。
昭和初期、帝都。文士の大久保は、怖がり要員として、新聞記者・関の怪談蒐集に引っ張り回される。酒浸りで怖がりの大久保に、どことなく胡散臭い関。本が絡むと箍が外れる編集者・菱田、オカルト好き華族…続きを読む
美しくもどこかおどろおどろしい昭和ホラーの空気感がリアルに再現された世界観が見事です。同じ昭和戦前期の作品を書いている者として、勉強になります。今後の展開に期待しております。
怪談として振り切らない隙間を不器用な人情が埋めてくれる。タナトスの誘惑に引きずられつつも、何とかして戻ってこなくちゃならない、そんな世話物。
この文体、文調、何を勉強すればこんな自然なレトロ感を出せるのでしょうか。世界観とマッチして、だから背筋にゾワッとくるものがあります。こういう作品、好きです。
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