抑えた筆致で描かれるリリシズム

アラサー女子の恋。紹介そのものの作品なのに、レビューを書けると思うまでずいぶん時間がかかった。おそらくそれは、紹介以上の多くがこの作品の中にあるからだろう。恋愛なのか、恋愛ではないのかもわからないような心の動きを抑えた筆致で捉えていて、そこにあるものは作品紹介よりもずっと豊かだ。にもかかわらず、最後2行まで読み進めると、その豊かな心の動きを「こんなこと」と片付けてしまいたい主人公の心情が、ぴしっと作品紹介にはまる。切なさの本当のところは、ここにあるのだな、と思わせるのだ。本当におすすめ。(そして、なぜか読み終わると魚が食べたくなるので要注意。)

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