ここは世の中の駆け込み寺。様々な心が集まる場所・・・

ピアニッシモからフォルテッシモへ。
徐々にストーリーが盛り上がっていく、まるで、交響曲のような作品です。

作品の底に流れ続けるのはユングの世界。
恋慕や憎悪などの感情が様々な事件を呼び起こし、義足の主人公が分析的な心理学に基づきながら、人の心を解明していきます。

ドロドロした事件も、不思議なことに、心理学の力にかかれば、ある種の「清潔さ」を帯びてきます。
これは、非常に新鮮な味わいです。

一方で、徐々に深まっていくミステリーは、一気に読み切らせるほどの魅力に満ちています。
複雑に仕組まれたトリックに潜む、人間の真実。
リアリティに引きつけられます。

ここは世の中の駆け込み寺。
社会の表舞台に出ることをためらった魂が入り込む、もう1つの舞台が読者の心を捉えて離しません。




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