懐かしさと新しさの組み合わさったスポーツ青春小説

スポーツを題材にした小説というのは、どうしても試合のスピード感やビジュアル的な派手さを演出しにくく、テーマに選んだ時点で不利だと個人的には考えています。
しかし今作はそれらの懸念やハードルを吹き飛ばし、純粋な『面白さ』を提示してきます。

まず何と言っても作者さんのバスケに対する深い知識と愛情に裏打ちされた文章が、練習や試合の熱気と疾走感、戦略や駆け引きといった要素を巧みに描き出していました。
バスケの細かいルールやテクニックを知らなかった自分でも、作中の部員達と共に学んでいるかのように、知識をすっと吸収する事ができました。ただ単に薀蓄のように書き連ねるのではなく、そうして読者に理解させるのは並大抵のことではありません。

文章だけなく物語の展開としても、王道的な部員集めから始まり、最初の壁にぶちあたり、しかし初めての勝利を手にしていく様と、安心して見届けることができます。
登場人物達にもそれぞれのバックボーンがあり個性があり、思春期特有の悩みと成長が、違和感なく一つのリアリティとして受け入れることができました。

特に『大人』達の描写が良いですね。亮介に代表されるようにそれぞれの大人がそれぞれ真剣に子供達に向き合い、共に歩んでいる様子を実感できるのが評価を上げる大きなポイントにもなっています。

バスケ経験者、スラムダンク世代には言わずもがな。
しかし個人的にはバスケを知らない幅広い世代の人にも楽しめる内容だと感じました。
久々に続きが待ち遠しくなる良作です。更新頑張って下さい!

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