第241話 自由貴族英雄伝開幕! その1


――自由貴族英雄伝第一章 幼少編あらすじ――


 とある村に、赤い炎のような髪と宝石のような碧眼を持った赤ん坊が生まれた。

 その名は、ハル・ウィード。

 彼は幼い時から子供とは思えない言動・行動をしていた。

 そして剣に興味を持ち始め、音属性魔法というユニーク魔法に目覚めた時、ハル・ウィードの英雄譚は動き始める。


 天才演出家、トール・ディクソンがハル・ウィードに直接過去の話を伺って演劇として落とし込んだ。

 事実に基づいた演劇、今までにない演出、圧巻される舞台美術。

 全てに拘りに拘りぬいた、トールの演劇家生命を全て注ぎ込んだ力作の第一章、開幕!




「な~んて大々的に言ってくれちゃって……。俺自身自分の過去を観るのが恥ずかしいんだがなぁ」


 俺の手には、この演劇のチラシがあった。

 俺の英雄譚って、めっちゃ恥ずかしいキャッチコピーなんだが……。


「まぁまぁ、そう言わないで。私が知らないハル君も見れるから、私は凄く楽しみだよ!」


 俺は今、家族全員で王都にある《王立歌劇場》に来ていた。

 俺の過去の話を演劇として落とし込んだトールさんの招待の元、所謂VIP席で劇を観る事が出来ている。

 今、俺の右隣でワクワクしているのが妻の一人であるリリル・ウィード。

 金髪で幼さが残る小動物のような可愛さがあるのだが、凶悪なおっぱいをお持ちのロリ巨乳だ。

 うん、今日も可愛い。


「確かに、王都での生活とかは僕も知らない事が多いからねぇ。是非とも見てみたいもんだ」


 そして俺の真後ろの席には、栗色の髪を後頭部にまとめた色気あるお姉さん、二人目の妻のレイ・ウィードがいた。

 彼女は過去に男性として育てられた《麗人》だったんだけど、紆余曲折あって麗人を辞めて俺の妻となってくれた。

 容姿が完全に年上のお姉さんで、未だにドキドキするが甘えるととっても可愛いのだ!


「わたくしは、王都に来る前のハル様を存じ上げませんので、とても楽しみにしていましたわ」


 俺の左隣には、三人目の妻であるアーリア・ウィードが座っていた。

 銀髪でとある事情で銀の瞳となっていて、お人形のような美しさと清楚さを兼ね備えている。

 元々我が国のお姫さまだが、俺の所に嫁として来てくれた。

 清楚系美人だが、いっちばん夜が激しいのはこの子だ。


 そして俺達の子供達も演劇を楽しみにしてくれていたのだが、一番楽しみにしているのが意外や意外、感情表現が乏しい双子のアリスとアドルだった。


「「ちちうえのことしれるの、たのしみです!」」


 相変わらず二人は声がハモるハモる。

 二人が別々で話す事自体があまりないから、ちょっとそこが心配ではある。

 でもそんな二人が目を輝かせて体を弾ませて楽しみにしてくれているのが嬉しくて、俺は二人の銀髪を優しく撫でる。


「ぼくはちちうえを、そ……そ? そーけいしてます」


 そーけい?

 ……あぁ、尊敬って言いたいのかな?


「わたしもちちうえがよくあそんでくれるから、だいすきです」


 二人ともまだ下っ足らずだが、精一杯思いの丈を伝えてくれている。

 前世基準で考えたら、一歳でここまで喋れる事が脅威なんだけどね。

 まぁ今の俺はこの世界の住人だ、そんな事は関係ないから気にしない。

 そして、俺も二人の事が大好きだ!


「俺だって父ちゃんの事大好きだぞぉ!!」


 ははっ、今日もランスは元気いっぱいだ!

 でも一番演劇に興味がなさそうなんだけど、大丈夫か?

 途中で寝たりしないかな?


「ママぁ、えんげきってやつはまだ始まらないの?」


「う~ん、もうちょっとかなぁ?」


「早く始まらないかなぁ、パパの昔の事知りたい!」


 レミィはリリルの膝元で抱っこされながら体を揺らしている。

 ……レミィの後頭部は、リリルの巨大なメロンの間に埋まっていて、レミィが動く度にメロンが激しく動く。


 ……今日の夜は激しくなりそうだ。


 そしてVIP席には他にも招待客がいる。

 いや、俺の権力を使って招待した、という言葉が正しいかな。

 一人目は、大学の貴族科で一番仲が良かったライジェル・グローリィ。

 こいつは我流だけど相当な剛剣の使い手で、芸術王国を名乗るわが国では珍しく武力で成り上がった貴族だ。

 現在は辺境伯になっていて、巨大な警備会社を設立。

 腕の立つ人間を集めて、主に魔物の脅威から守る業務を行っている。

 この警備会社のおかげで、兵士は侵略者対策、警備会社側は領民や国民を危険から守るという役割分担が可能となり、その功績を認められて辺境伯までのし上がった。

 うちもお世話になってます。


「今日は招待ありがとう、ハル」


「普段仲良くしてもらっているし、警備会社にもお世話になっているからな。よかったら楽しんでいってくれ!」


「ああ。また近い内に剣で勝負しよう。次は絶対に負けないぞ」


「ふっ、返り討ちにしてやるさ!」


 爵位は俺の方が上だけど、同等の友達として付き合っている。

 本当に気を許せる友人だ。


 二人目は《絵画貴族》として名が通っているオーランド・ラッセル公爵。

 彼とはうちの音楽のジャケットイラストを任せていて、公私ともにお世話になっている。

 普段はオーランド兄貴と呼ばせてもらっている。


「今日はハル君の過去を演劇として見れるのをすごく楽しみにしていたよ。三部作らしいから、しっかりと最後まで観させてもらうよ」


「……俺としてはただただ恥ずかしいんだけどね」


 三人目は《算術貴族》として数多くの数式を生み出したバルディアス・カーディナル公爵。

 今や超一流の魔道具職人となったアーリアとよく協力していて、自然と俺との縁も出来た人だ。


「私としては、どうやったら君のような破天荒に育つのかを知る機会が出来たので、非常に楽しみではあるな」


「いや、普通に育っただけだからな、バルにい?」


 俺としては行動したら、いつの間にか色々な事に巻き込まれたって感じなんだよなぁ……。


 そして四人目。

《薔薇貴族》として薔薇を芸術として発展し、見事な庭園を作る庭師を多く育てたリリアーナ・アレクセイ公爵で、リリねぇと呼ばせてもらっている。

 うちの奥さん達とお茶会で遊んでくれている人で、最近再婚して高齢出産を乗り越えた人物だ。

 ってか、この世界早熟過ぎる為、三十五歳以降は高齢出産扱いになる。

 リリ姉は二年前に出産したのだが、その時は四十歳。

 この世界においては超高齢出産だ!


「今日はご招待ありがとう。貴方がたの旦那様の演劇、楽しみにしてますわ」


「是非楽しんでくださいね、リリ姉!」


「うちの旦那、小さい頃から大暴れしてるから!」


「本当、暴れん坊ですわよ、わたくしの旦那様は」


 おいアーリア、お前ちょっと下ネタくせぇぞ。

 ってかお前の方が暴れん坊だろうが、夜だと!


 五人目は《美容貴族》として名を馳せており、美魔女という言葉がぴったりのララ・サージバル公爵。

 二十代後半に見えるが、今年でついに五十歳となる。

 それも全て日頃の努力の賜物で、美容においては彼女の右に出る女性はいないだろうな。

 ララ姉もうちの奥さん達と遊んでくれていて、彼女が発行している美容雑誌のモデルとして奥さん達を起用する事が多い。

 愛人も増えているらしく、実は愛人たちの子供が結構いた事が発覚!

 最近は領地を継ぐ子供を選定している最中なのだとか。


「今日はお誘いありがとうねぇ? ハルちゃんの過去話、楽しみで仕方なかったのぉ」


「今日も色気たっぷりだねぇ、ララ姉」


「あらぁ、最高の褒め言葉をありがとぉ、ハルちゃん。よかったら一晩だけでも味わってみるぅ?」


「残念、うちの奥さん三人は、ララ姉と同等以上の色気があるので間に合ってるんだ」


「むぅ、本当に残念ねぇ」


 その色気でどれ位の家庭をぶっ壊してきたのだろうか。

 ちょっと怖い人である。


 貴族としては最後の招待客は《騎士貴族》であったログナイト・カーリィの息子であるデューク兄さん。

 ログナイトのじいさんは去年七十三歳という年齢でこの世を去り、世界最高齢として記録された。

 そしてデューク兄さんがじいさんの跡を継いだのだが、剣の腕はじいさん以上のものだった。

 俺は兄さんと強固な軍事協力体制を引いていて、王都に対する最終防衛ラインを築いたんだ。


「今日は招待してくれてありがとう、ハル」


「こちらこそありがとうだよ、デューク兄さん」


 後は元国王の親父を誘ったんだが、もう一国民として暮らしているので、一般席で観るとの事だった。

 親父、未だ消えぬ自分の影響力をわかってないだろう?

 現国王の兄貴は、どうしても忙しくて時間が作れないと、涙ながらに断られてしまった。

 うん、仕方ないね。

 

 そして一般人枠で招待したのは、俺の両親と妹だ!

 俺のバンドメンバーは残念ながら劇の演奏補助の役割を担っているので、劇を楽しむ事は出来ない。

 VIP席で色んな人間とくっちゃべって待っていると、アナウンスが流れ始めた。


『長らくお待たせ致しました。ただいまより《自由貴族英雄伝第一章 幼少編》を始めさせていただきます』


 このアナウンスが場内に流れた瞬間、劇場自体を揺らすんじゃないかという位の拍手が響く。


 さぁ、トールさんよ、渾身の演劇を見せてもらうぜ?

 

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音の魔術師 ――唯一無二のユニーク魔術で、異世界成り上がり無双―― ふぁいぶ @faibu_gamer

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