「泣き」にもラブコメにも手を抜かない全力投球!

のっけからかっ飛ばすラブコメです。
天然美少女、アホの子、マゾッホの眷属……。
それぞれタイプの違うヒロインに振り回されながら話は進んでいきます。
前半はひたすらヒロインがかわいい。
これだけで頁をめくる手が止まりません。

が。
本作はラブがコメするだけにはあらず。
時折語られるヒロインの背景や、主人公たちにまつわる歴史の話も練り込まれています。
随所で挿入されるキーワードも過不足なく、ぐいぐい読者を牽引します。
これらは決して仰々しく語られないにも関わらず、後半の鍵として鮮やかに機能するのです。

そして後半、怒涛の急展開。
ベタ甘な日常は終わりを告げ事態は一気にシリアスに。
練られた設定が緊迫感を煽り、前半との落差も相まって気が抜けなくなります。
牙を剥いた宿敵とヒロインに待ち受ける悲壮な運命。
そして主人公との別れ。
10話、涙を流しながらも懸命に笑顔をつくるヒロインが切なすぎて辛かったです。
前半のラブコメもシリアスな設定も、全てはこのシーンを描くために用意されているはず。

話のテンポや文体も読みやすく、気が付いたらのめり込むこと必至。
主人公も気持ちのいい少年で、後半は心の底から応援していました。
ジャンルも学園、伝奇、ちょっぴり異世界といいとこどり。

「泣き」にもラブコメにも手を抜かない全力投球スタイル。
ベタ甘だけでは物足りない読者にぜひ!

それと、タイトルが最高に冴えてます!

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