内に滾るエネルギーを持て余す、思春期の心の断面を爽快に見せた秀作です

ああ、なんかすごくいい話だ──。

最終話を読み終えて一番初めに出てきた感想がこれです。

前半は、周りに期待される自己像を演じているのか本当の自分なのかわからなくなりながらも周りに合わせている委員長リツコの話。
後半は委員長の元同級生の友人でドラムをやっているハジメの話。
高校一年生の彼らはまさに思春期の真っ只中で、自分のうちにそれぞれギリギリのところで抑えて溜めている何かがあって、ともすれば噴き出してしまいそうなそれを抱えながら、高校一年生らしい日常を演じるかのように送っている。
そんな日常で人と関わりながら、人と向き合い、自分と向き合う中で押し上がる、大人への階段という名のステージ。
彼らがそのステージを一段押し上げる瞬間を鋭利に鮮烈に切り取った物語がそこにありました。

妙に理屈っぽくも軽妙に、息継ぎなく語る独特の長文も、息継ぎのままならない彼らの内側を絶妙に表しているように感じます。

助走をつけた委員長、これから芽吹く大地を固めた青木君。
彼らのエネルギッシュで清々しい青春に胸を打たれる素晴らしい作品でした。

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