吐く息が凍るような切ない物語

 氷河期が訪れ、人類の天敵が出現した未来の話。

 神の手によって、食物連鎖のピラミッドのおいて、人類より上に置かれたと思しきフィンブルに対して、人類が切った対抗のカードは、フィンブル因子を植え付けた子供たちで構成されたフィンブル殲滅部隊「ワイルドハント」。

 獣性を与えられ、大人たちに反抗しつつも、運命に抗いきれず化け物を追って、雪原を走る幼い獣たちの物語。

 ラノベに逃げることなく、かといってSFに踏み込むこともなく、あやうい境界の上を、少年少女たちのドラマで紡いでゆくポジショニングが見事。

 また本作の最大の魅力は、全体に流れる雰囲気。

 夜の暗さ、冬の寒さ。静かに流れる音楽が耳に浸透してくるように、悲しみや怒りが皮膚感から伝わってくる。

その他のおすすめレビュー

雲江斬太さんの他のおすすめレビュー438