最終回 復楽園
背中に、冷たく硬い床。
胸元を、生温く汚す赤。
「イヤァッ! 嘘でしょ、アキラ!!」
カグヤ──
「早く医者を!! 誰か……誰か!!」
つば姉──
2人の声が、すぐ側で響く。
僕にすがりついて泣いてる。
「やったぞ!! 魔王アキラに天誅を──あぐッ!」
「じっとしな!!」
取り押さえた、か。
撃った、奴。
「反逆者は死刑だって聞いたろ!」
「俺の名は魔王を討った勇者として
「ああ、
「……え」
頭を、ガスッと、踏んづけた。
「ただし勇者じゃなく、愚者として」
「貴様!? その傷で
「無傷だよ。自分で仰け反って転んだのさ、撃たれたと見えるように
一方、カグヤとつば姉は慣れたもんだった。
今も迫真の演技、女王の日々の賜物だって。
「バカな……!」
「バカはテメー等だ。オレ達は言わば魔王倒した後の勇者様御一行。ポッと
「あ、あ……」
「そしてこちらが別動隊の狙撃手でーす!」
「そしてコイツが首謀者だ」
ドサッ
ドサッ
艦長さん──
「
「フフッ、どういたしまして」
「お安い御用よ、アキラ~」
「いい運動になったぜ」
「では、用意を」
「(×3)イエス ユア マジェスティ!」
「なッ!」
「何を!」
「ああ!」
僕とカグヤとつば姉の許には、人の身長ほどもある長い包丁──
艦長さんがマイクを取る。
『それでは! 夫婦となった3人の初の共同作業──』
「ふざけるな! こんな風に死ぬなんて話が違う!! やめろ、やめろォッ!!」
「待ってくれ、私は違う! 金で雇われただけなんだ、
「嫌だァーッ! 死にたくない! お母さん、助けて!!」
『
「「「ああああああああああ──」ああああああああああ──」ああああああああああ──」
「フハハハハハハハハハハ!! 見よ! これが身の程も
◆◇◆◇◆
それから。
まずはお色直し。僕とカグヤとつば姉は血に染まった衣装を脱ぎ、お風呂で血を落とし、上がってから着替えた。2人はもう1着ずつ用意しておいた同じウェディングドレス、僕は今度は普通の黒いタキシードに。
そして披露宴。
3人で改めてケーキカット。
今度は本当の意味のケーキ。
広大な会場で、集まった大勢の参加者と共にケーキとご馳走を頬張った。その中にはオヤジ──アフリカでお世話になった組織のボスと、その組員の仲間達も招いた。以前通り親子同然に接してくれたオヤジ以外、
宴が終わり、その日の夜。
花嫁2人と初夜を迎えた。
翌日、世界中を巡る新婚旅行へ出発。
世界中の人々に
師匠。
ヨモギ。
僕のせいで死なせてしまったみんなが僕を許してくれるかは、あの世で再会してみないとわからないけど。少なくともその時に胸を張って会えるよう、僕はカグヤと
◆◇◆◇◆
しばらくして、新婚旅行を終え。
僕達は新しい日常を始めた。
「じゃ、お
「お
「お
「(×3)いってらっしゃい」
笑顔で手を振るカグヤのお母さんと僕の両親に見送られ、宮殿を出る。僕達夫婦は今、この3人と暮らしている。3人とも仲が良く、僕達みんなにこれでもかと愛情を注いでくれていて、家族円満だ。
僕の両親はルナリア王国が四大国を併合した時から、僕の身内ということで類が及ばないようカグヤが保護してくれていた。おかげで僕は、必ず帰るという両親との約束も果たすことができた。再会した時は、互いに大泣きした。
僕は今通っている高校の学生服。
カグヤは茶色のオーバーオールと帽子。
つば姉は白のワンピースに僕の贈った空色リボン。
カジュアル!
3人とも
3人手を繋いで町を歩き、最寄のアーカディアン専門店へ。別室に別れて各自ログイン、電脳世界でアバター同士で再会する。
踊り子みたいな姿のカグヤ。
剣道着姿のつば姉──
生身と違って昔のままの僕。
そして。
黒衣の銀髪美人エイラ。
金髪の少年姿の
2人も合流。
『これより集団の部、第1試合を開始します』
グラール──
第5回・機巧操兵アーカディアン世界大会
第1回以降、僕が離れている内にアーカディアンの中では新たな猛者が育っていた。Gが関係ない純粋な操縦技術では僕も勝てるか怪しい人がわんさかいる。こんなに嬉しいことはない──
全員、ブッ倒す!!
『VDファイト! レディ、ゴー!!』
「チーム・クロスロード、出撃!!」
『オーラム!
『アルマース! エイラ、出る!!』
『シルバーン! カグヤ、行くわよ!!』
『グラディウス!
「オーラム! アキラ、行きまーす!!」
◆
【 完 】
機巧操兵アーカディアン 天城リョウ @amagiryou
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