このケゲルの行方は?

 冒頭よりじわじわと押し寄せる恐怖。

 戦士の力を与えられ、戦いに巻き込まれる主人公。そしてそれを取り巻く家族、友人、そして警察。

 これは人の少年が、足掻き、葛藤し、苦しみつつも戦士として成長してゆく物語である。


 ただ、やはり気になるのは、設定があまりにも「仮面ライダークウガ」であること。

 また、読みやすさを優先するためか、共通コードが多い。

 たとえばヒーローであるエルガイアの外見に関して、その記述がほぼない。それは敵のミュータントも同様。
 文章力が高いゆえに、特撮好きの目には、どうしてもクーガとグロンギの姿がちらついて離れない(笑)。

 「学校」や「警察署」はまだしも、「ヒーロー」や「怪人」まで、読者の記憶に頼り、「ほら、わかるでしょ」的な描写にたよるのは、まるで二次小説のようだ。


 だたし、これは描写の上のことであり、本作で描かれる人間たちの、熱く、血がたぎるようなドラマは一級品。逆に特撮的な部分を「共通コード」化することによって、それが引き立っているのも事実。


 でもやはり、個人的には、「名刀は、それに相応しい鞘に収まっているもの」だと、思うのだが。

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