図書館、と言うタイトルに惹かれて読み始めたこの作品。
想像以上にたくさんものテーマが凝縮されていて、読み応えがありました。
胸がきゅっとなるような、辛いシーンもあるけれど、何処か優しい雰囲気が漂うので、ほっこりしつつ読み進めました。
話が進むにつれ、どんどん世界にひきづりこまれてしまい、最終話はこれで終わりかー!と思わずにはいられませんでした。
物語の展開のさせ方とキャタクターの心情を汲み取るのがとても上手で、ほへえええ、と思いながら読みましました。
会話もそうなのですが、キャタクターの動かし方がなんか本能的にわかっているいうか、勝手に動いている感じでした。
是非、読んでみてください!
ただしこれは遊びで無いことを、よく考えてくださいな。
本の修復士サミュに手を引かれ(規則だから仕方ない)新米のアルバイト助手セレスは本の中へと入り込む。
ただし、本は傷つき病んでいます。お仕事なんです、これは。
書き手の手から離れ、ひとつの個として成り立つ本には、それぞれ伝えたい事がある。それが、こちらの意に添うものとは限らない。
生業だから治す、修復士の才があるから治す、そんな修復士の中にあって、才のないセレスがもっていたものとは。そしてセレスに関わる中でサミュに訪れる変化とは。
ってね。
ぐうたらサミュと生真面目セレスが開き、開き、向き合う九編四十八話の物語。
感極まることもございましょうが、館内はお静かに。
本を診る者とその助手は、心身が傷付いた本達を巡る、小さく果てしない旅を続けます。
本の中にある人生とは、ページの端々にまで語り綴られるドラマ。英国の蒸気機関車を吹き立たせる情緒、薔薇匂い立つロマンス、創作物としての物とは言え、それらはずっと人々を魅了させ、また感情を持ち、悩み傷付いたりします。それらを直す、というよりも癒やすといった心での対話で解決します。
本、彼らは感情と肉をもった命。物語の中で生きていると、教えられます。本は一つの箱庭でありながら、誰かのための物語であり人生となる。読み手として、読書とは孤独で寂しいものではないと気付かされました。
そして蛇足にこう考えます、どうやったらこの物語を「サミュの図書館」を傷付けないかと。私は物語に入り込む特別な才能がないので、ただ一言「出会ってよかった」との言葉を添えることしか出来ないのが惜しいです。
とはいえここまで気障ったらしく連々と書き連ねてしまいました。
このレビューの世界の一人の人間として、クリスティーヌちゃんに平手打ちされたいです。
ふと、この話をよんで、宮部みゆきさんの『英雄の書』を思い出しました。この二作品は、話の筋こそ違えど、どちらも、作品ごとを一つの世界として捉え、その一つずつの世界をめぐる物語としているからだと思います。
もしも、本に命があるならば、不満がないわけがない。
本の世界は不条理と、悪意と、絶望に満ちていて、最後が良くても、全てが明るいなんてない。読者からしてみれば、終わり良ければすべて良しかもしれないが、本の登場人物からしてみれば迷惑でしかない。
そういう不満を持つ本は、作中の言葉を借りるなら「傷ついてしまう」のです。
その不満の解消を願うあまり、歪んでしまうのです。
その解決を行うのは、登場人物のサミュエル、アルベールたちが担う「修復士」たちです。ヒロインのセレスはそのアルバイト的立ち位置で、修復の力がないからこそいい役割をしてくれています。
本の修復を通し、明かされる彼らの過去や、彼らの成長は必見です!猛プッシュだ!
本に限らず「おはなし」にはある意味「命」が宿っていると私は思う。
それは、決して作者の「命」というわけではない。
「おはなし」は、誰かの手に渡った時点でその人の心の中で全く違う「命」として「おはなし」を紡ぐ。
人によって解釈は多様だ。
作者は決してそれをコントロールできないし、「おはなし」にもそれはできない。
では、そんな「おはなし」たちに、例えば願望があったなら?
親が子を支配したいように、作者もまたそれを行ってしまったとしたら?
このお話は
「サミュの図書館」は。
すべての「おはなし」達による「おはなし」のための物語であると。
私の中の「おはなし」は言っている。
まずは一冊「治して」みませんか?
自身が創作した作品は自分だけのものだ。そんな慢心はもしかしたら、知らず知らず「本を傷付けている」かもしれない。
本が精神的に傷付くとはどういうことだろう。そう思って読み進め、すごくスムーズに腑に落ちた。そこは私が見知った世界。すごく身近。作中の本は紙媒体だけれど、ネットの海にも傷付いた作品がそこかしこにある。自ら腐るものもあれば誰かによって攻撃されたものもある。一口に傷といっても様々で、感慨深い。
傷を治すお仕事。修復士。
その才能にも個性がある。
サミュとアルベール。そして修復の力を持たないアルバイトのセレス。
傷んだ本の世界を開いて、その傷に触れる勇気はありますか。
本が読まれたいって叫んでる。本が利用されたくないって嘆いてる。
あなたの本はあなたの道具にすぎないのか。
誰を愛し、誰に愛されるのか。
何故修復出来ないのか。力と想い。感性と知識。目的と手段。役割と立場。自分と自分。心のこえが聴こえますか。呪いと救いはここに。
すっげ苦手なタイプのアルベールがカッコいいとか正直悔しいんですがね、この憤慨する感情はサミュにでも癒してもらいましょうかね!