傷付いた本の世界へ


自身が創作した作品は自分だけのものだ。そんな慢心はもしかしたら、知らず知らず「本を傷付けている」かもしれない。

本が精神的に傷付くとはどういうことだろう。そう思って読み進め、すごくスムーズに腑に落ちた。そこは私が見知った世界。すごく身近。作中の本は紙媒体だけれど、ネットの海にも傷付いた作品がそこかしこにある。自ら腐るものもあれば誰かによって攻撃されたものもある。一口に傷といっても様々で、感慨深い。

傷を治すお仕事。修復士。
その才能にも個性がある。

サミュとアルベール。そして修復の力を持たないアルバイトのセレス。

傷んだ本の世界を開いて、その傷に触れる勇気はありますか。
本が読まれたいって叫んでる。本が利用されたくないって嘆いてる。
あなたの本はあなたの道具にすぎないのか。
誰を愛し、誰に愛されるのか。

何故修復出来ないのか。力と想い。感性と知識。目的と手段。役割と立場。自分と自分。心のこえが聴こえますか。呪いと救いはここに。





すっげ苦手なタイプのアルベールがカッコいいとか正直悔しいんですがね、この憤慨する感情はサミュにでも癒してもらいましょうかね!

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