戦前の日本を舞台に帝国諜報機関のスパイたちが難事件に立ち向かう。

主人公は明智湖太郎は皇国共済組合基金に勤務する青年。

しかしそこは表向きは陸軍の福利厚生を業務としているが実はその実体は「無番地」と呼ばれる陸軍中野学校傘下の諜報機関であり、彼もそこに所属するスパイの一人です。

物語は憲兵隊の大佐の娘に脅迫状が届き、明智が護衛を命じられるところから始まります。

冷徹で隙のないハードボイルドな男たちの血を血で洗う暗闘が描かれることになる……のかとおもいきや、主人公はスパイでありながら女性が苦手で真面目気質で自分より有能な同僚にコンプレックスも抱いている、人間味あふれる人物です。

展開も「犯人当て」や「暗号解読」などミステリ要素を交えつつ、個性あふれる仲間たちと事件を解決していく、良い意味で重い展開にならない読みやすさがあります。

ストーリーとしては五つの中編となっていて、アクションもあればコメディもありロマンスも絡めている飽きの来ない構成です。

文章も昭和中期のどこか危うい時代の雰囲気を醸し出しながらも、丁寧に人間描写がされているため、とても入りやすく楽しめる物語となっております。

最後までスムーズに楽しむことができました。


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