彼が遺してくれたもの。桃の花びらのような。

見てはならない「カルナ」とは何なのか。
幼い「私」が想像したように、不吉な大蛇のようなものか。
なぜその夜に外に出てはならないのか。
その村は何を隠しているのか。

学校が長期休みの時期になると、
「私」は父方の祖母が住む田舎で過ごした。
何もない、人の少ない、のどかなばかりの場所。
でも、そこでの暮らしが「私」は好きだった。

素朴で瑞々しい文章によって
どこか不思議で美しい田舎の情景や、
「郵便屋さん」の青年への淡い想いが綴られる。
恐ろしくもあり、おぞましくもある「カルナ」さえ、
幻想的で儚く切ない情景として描かれる。
物悲しくも美しい物語、すごく好きなテイストでした。

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