エピローグ
街路樹がまとう無数の電球が、低く降りてきた星のように温かな光を放っている。
商店街のアーケードにつけられたスピーカーからは、ルロイ=アンダーソンの『そりすべり』が軽快に流れてくる。
「あっ!お父さん!見て見て!」
父親の手を引っ張った少年が、おもちゃ屋のショーウインドウの前で足を止めた。
「僕ね、サンタさんに、このおもちゃをお願いしたんだ!」
小さな手で指さすガラスの向こうには、今テレビで放送されているヒーローの変身アイテムがディスプレイされている。
「へえ。かっこいいな!お父さんにも貸してくれるかい?」
「ええっ? お父さんもエグゼイドになりたいの?
…しょうがないなー。ちょっとだけなら、いいよ?」
母親の手に引かれた小さな女の子も追いついて、兄を押しのけるようにガラスにへばりつく。
「おにいちゃんばっかり見てずるい!あたしのほしいのも見たーい」
「おまえの欲しいのはプリンセスのドレスだろ?ここには飾られてないよ」
兄妹げんかが勃発しそうな空気に、母親がやれやれと呆れて笑う。
「今夜サンタさんからプレゼントもらえるんだから、ここでわざわざ見なくてもいいでしょう?
冷えてきたし、早く家に帰ってクリスマスパーティーしましょ」
父親が、母親の肩をそっと抱いて微笑む。
「母さんが、お前たちの大好きなパンを焼いてくれたんだぞ。
それに、具だくさんの特製スープ、ローストチキンも作ってくれた!
いちごのケーキを買って電車に乗ろう」
両親が歩き始めたのに、幼い兄妹はまだショーウインドーの前で場所争いをしている。
「
「はーい!」
二人は慌ててショーウインドーから離れて両親に駆け寄った。
クリスマスイブで賑わう商店街には、幸せな笑顔が溢れている。
家族が離ればなれにならないように、四人はしっかり手をつないで家路に着いた。
―クリスマスに、たくさんの愛を込めて―
*fin*
聖ニコラウス局給付統括部アジア第十二配達課ミカエル・ベルティーニのクリスマス 侘助ヒマリ @ohisamatohimawari
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