第10話 娘語る・3

 またなの?先週五万円渡したばかりじゃない。付き合いって、会社の飲み会程度ではそんなにお金使わないでしょ?接待って言われても、納得できないよ。どこに行ったらそんなにお金を使うのよ。別に責めているわけじゃないけど、私にだって限界があるんだからわかってよ。


 いやっ!やめてっ!どうして叩かれないといけないのよ!


 私頑張っているじゃない。あなたのために仕事だって、お金の工面だって・・・。 


 お母さんの具合が悪くなっても実家に帰ることができなかったのは仕事を頑張っていたからなんだよ?私は自分のことを後回しにしてでも大輔のために仕事を頑張って支えているのに。いや、違うの、恩着せがましいこと言っちゃってごめんね。私は大輔が好きだから・・ぎゃっ!


 ごめんなさい!ごめんなさい!もう言わないからやめて!ひっ・・ぐぎっ!


 私もっと頑張るから。結婚に関する費用もちゃんと用意するから。だから怒らないで・・お願い・・・。


 一緒にいたいもん。大輔とずっと一緒にいたいの。一緒に居られるためだったら兄さんの離婚も夕夏さんの存在も全部私が操ってやるわ。だから私を信じて待っていて。


 お金が貯まったら二人で自由に生きていこうね。きっと幸せで明るい生活が待っているわ。私が何を犠牲にしてでも大輔を幸せにしてあげるからね。私はお母さんや夕夏さんみたいな頼りない女じゃないから、絶対に大丈夫。


 後ろめたさだってないんだから堂々と太陽の下を歩いていけるのよ。とっても素敵なことよね。私たちは特別な存在なんだよ。だから、ね?包丁なんて捨ててよ。そんなの大輔には似合わないよ。私たちにはもっと似合うものがあるんだから。

そんな目で見ないでよ。私は違うの。みんなとは違うの!


 大輔・・・・目の前が真っ暗だよ。何があったの?これからなのに・・。これから私もっと頑張るのに。大輔・・・・・・なんか寒いよ。明るいところに行きたいよ。

 

 だいすけぇ・・・・・・・・・・。

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消したい奴らは陽だまりを愛す 千秋静 @chiaki-s

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