読者様からの推薦 4 ~【【あんぱんは】焼却炉の中で拾った【昼飯だった】】~
そこは異様な空間だった。
だが、既にその場に慣れてしまっている彼らには、そんな事はどうでもいい事実である。
彼らの興味はその場の異様さではなく、目の前に舞い降りようとしている天使のような個体に向けられていた。
「来るか……」
彼らの役目は、人類にとっての防壁である。
少々気を利かせて歴史風に表現するならば、
この世界では、そんな彼らを『紋章師』と呼称していた。
「隊長さん、隊員さん、逃げるなら今のうちですよ」
天使のようなその存在は、抑止力と呼ばれる人とは異なる存在。
人々の日常を守るため、紋章師は己の意を投影した紋章と共にその『抑止力』と日夜戦い続けているのである。
「侮らないで頂きたい。我々とて、この世界に足を踏み入れたからには覚悟が出来ている。無論、紋章師としての研修も受けてきた」
隊長はニヤリと笑みを浮かべ、その背後に待機していた紋章と呼ばれる人型の個体に声をかける。
「初陣だ、アイザック・ノルヴァ」
「初陣と初夜はどちらが難易度が高いと思う。教えてくれ主殿」
「さあな。初陣は何度か経験したが初夜は……おい、何を言わせる気だ」
その更に後方には、隊員が身を低くして様子を伺っている。
隊員のすぐ横にも、同じように紋章と呼ばれる人型の個体が待機していた。
「俺たちは後方支援かな。頼むよハルカ・コトブキ」
「はい。空腹での戦闘は危険ですが、満腹状態でも動きは鈍くなります」
「え? あ、うん、そうだね」
イマイチ会話がかみ合っていないのは、彼らの紋章師としての実力が低い所為かもしれない。
先頭に立った紋章師が、半ば呆れ顔で二人へ言葉を投げた。
「同じタイプの紋章でも、受肉時に個体差が生じる。そしてその個体差は、紋章師の内面が投影される可能性が高いと言われている」
「おい、失敬だな君は。まるで俺が年がら年中初夜の事を考えているみたいではないか。相手もいないと言うのにだぞ。おい、結婚適齢期の女性を紹介しろ」
「そうですよ。まるで俺がいつも飯を食う事ばかり考えてるみたいじゃないですか。ああ腹減った。とっとと終わらせて飯食べに行きましょうよ。ね?」
紋章師は表情を引きつらせ、二人に向けられていた目線を敵へと戻した。
「お二人は、そこで見ていてください」
言うと、己の両サイドに待機させていた紋章へと指示を出す。
「ハイリッヒ、突っかけて相手を引きつけろ。カミーナは背後に回り込め。俺は正面からだ!」
「はい、主殿!」
「了解、主殿!」
こうして始まった戦闘は、隊員と隊長の目には驚くべき光景であった。
他のファンタジー小説やSF小説の世界とは異質な、紋章という存在と紋章師とが繰り広げる、抑止力との激しいバトル。
あまりの事に、隊長も隊員も割って入る事が出来ずにいる。
「おい、行けると思うか?」
「無理ですよこれは。感想でも書いておきますか」
「そうだな、そうするか。邪魔をしても悪しからな」
こうして二人はバトルを見なかった事にして、感想を書き始めるのであった。
◆読者様から頂戴した他薦作品を紹介させて頂きます。
タイトル:【あんぱんは】焼却炉の中で拾った【昼飯だった】
ジャンル:現代ファンタジー
作者:あんみつ様
話数:7話
文字数:36,877文字
評価:★13 (2017.03.07現在)
最新評価:2017年2月11日 00:51
URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054881095868
検索時:『あんぱん』で検索しましょう。
キャッチコピー
――ある日、突然世界は繋がった――
●頂いたお便り(近況ノートより転載)
ぜひ、取り上げて頂きたい作品に出会いました
【あんぱんは】焼却炉の中で拾った【昼飯だった】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881095868
著者は あんみつ さん
36000字ほど
紋章師と呼ばれる人たちが紋章という使い魔的なのを使って異世界と戦っているけど、一般の人達は知識としてそういうことがあるって知っている程度に普通の世界
で、ギャグテイストでありながら、シリアスなんです実は
語ると長くなるので、私の近況ノートのリンク貼ります
(ホント、長くなっちゃったので)
あと、タイトルの回収も見事!
取り上げるにしても、しないにしてもぜひご一読を m(_ _)m
感想★★★
始めに申し上げておきます。
読者を選ぶ可能性が高いと思いますが、そういう物としての評価であり、その点については減点対象にしていません。
最初と最後のシーン以外は、全てが掲示板――所謂2ちゃんねる風――で描かれていくタイプの作品です。
この手の手法は幾つか見てきましたが、この作品に関しては本当にどっぷりどこまでも掲示板メイン。むしろ、掲示板の外には一切出ないで物語が進んでいくというのが特徴的です。
そうであるにも関わらず、これは本当に不思議なのですが。
設定は読み手の空想をかき立てる丁度いい塩梅で、スケールはとてつもなく壮大で、めちゃめちゃかっこいい世界観がドドーーンと広がっているのです。
いや、掲示板は掲示板なんですよ。
だけどドドーンと大きくてかっこいい何かが、その向こう側に広がっているのが見えてしまうんです。どこにも書かれてないのに、読者が勝手に空想してしまう。
この感じ、何なんでしょうかね。
何も知らずに読み進めていく事に不安を感じないのは、主人公も割と無知だからでしょうか。
傍観者として眺めるもよし、掲示板の住人として眺めるもよし、主人公に感情移入しながら読み進めるもよし。
素晴らしい良作だと思います。
ただ感想の冒頭で申し上げた通り、読者を選ぶと思います。
実は私も、掲示板を全く使わないですし普段も殆ど見ない種類の人間です。
なので、慣れるまでは読みづらくて読みづらくて仕方なかった。
これが、掲示板という文化に触れた事のない人が目にした時の感想は、それはまあお察し、と言ったところでしょう。
ただし、良作である事は間違いありません。
掲示板が得意な方も、そうでない方も、是非ご一読下さい。
埋もれちまった悲しみに 犬のニャン太 @inunonyanta
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます