歴史上の『覇王』、すなわち天下人。
戦国時代では、信長、秀吉、家康の三人です。
この三人が抱える「秘密」とは何か?
それぞれの「子」にまつわる秘密を縦糸として、大胆に歴史の裏側をえぐっていく傑作です。
信長の子である信忠、信雄、信孝、そして勝長。信忠の出自の秘密が、本能寺で信忠が逃げられなかった理由として語られます。
秀吉の子である鶴松、秀頼。なぜ鶴松は祝福され、秀頼は祝福されなかったのか。にもかかわらず、秀頼が秀吉の実子として滅ぼされた理由は。
家康の子である信康、秀忠。秀忠が生まれた直後に、信康が切腹して果てたのはなぜか。
そしてもう一人、覇王未満の男、明智光秀と、その子、光慶。彼等も重要な役割を果たします。
その一方で、女の影も見落とせません。生駒御前、築山殿とお大の方、西郷局、そして春日局。
女の確執と怨念が横糸となって縦糸の秘密と絡まり、壮大な絵巻物を織り上げてきます。
覇王の懐刀、黒田官兵衛や本多正信も実に魅力的に描かれています。そして南光坊天海についても、非常に斬新な解釈で描かれます。
斬新な説にも説得力のある裏付けがあり納得がいく、非常に面白い作品です。
戦国史が好きなら、ぜひ読んでみてください。
歴史小説や大河ドラマでは語られる事のない角度で、有名な歴史事件後の闇の部分を、主に【女性】というキーワードを主軸にして見事に描いていると思う。
吉乃様の子供達、信康事件、武田の滅亡、本能寺の変、小牧長久手、そして大坂の陣、そして江戸幕府250年礎。
他の歴史小説で山ほど書かれている箇所は見事に端折り、歴史好きには釈迦に説法になりかねない部分を大胆にショートカットしながら、目から鱗の新説をバンバン投げかけてくれます!
妄想が膨らんで寝れなくなります。
お酒飲みながら真田丸1話目から見直したくなりました。
何故なら、本作に登場する徳川家康さんと本多佐渡守さんが、真田丸 に出てくるお二人のマンマなんですよ(笑
歴史好きは必見ですー!
織田信長、徳川家康、明智光秀、豊臣秀吉を軸に、
有名な戦国武将の「闇」に注目したエピソード集。
織田軍の華やかな勝利の陰でに滅んだ家の因縁や、
女系の血筋に目を向けた叙述に、時にゾクリとする。
各エピソードは短く簡潔で、ダイジェスト版といった印象。
もっと突っ込んだ描写や記述がほしい場面もあるが、
呼称等の言葉遣いが徹底しており、雰囲気が抜群にいい。
かなりの量の資料を読み込んだ上での執筆なのだろう。
時系列的に点と点をつないで描かれる戦国時代像は、
薄暗い情念と怨嗟が燃えるようで、静かだが烈しい。
個人的には、武田氏の滅亡と織田家の兄弟の因縁や、
南光坊天海に関する独自解釈が特におもしろかった。
どちらかと言えば、戦国時代に通じた読者向けの作品だろう。
時代の流れの全体像をつかんでいれば、より深く楽しめる。
とはいえ文章がよく、戦国時代初心者にも読みやすいはずなので、
興味があればぜひチャレンジしていただきたいと思う。