キリトリセン~芸術的勇者~

作者 寝る犬

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★★★ Excellent!!!

端的で読みやすく、かつ無駄のない洗練された文章。これほど読みやすい文を書ける人はなかなかいない。
また、起承転結がしっかりとしており、物語の余韻も上手く引きを取っており、ちょっとしたジャパニーズホラーのようなしっとりとした「嫌な気配」をゾクゾクとさせてくれる。

ちょっとした一文にセンスを感じられる良作だと感じた。

★★ Very Good!!

ネクロフィリアを患う勇者の物語です。生物を物体に変えることに執着する変質的な主人公なのに、凄惨な印象もなく軽快な読み味で描ききっているのは作者の文章力のたまものでしょう。
また、足しすぎず引きすぎない5000文字以内で書かれた物語は、構成の巧みさでぐいぐいと読者を引っ張ります。
全ての屍体愛を放出して迎えたエンディング。しかし性癖はそう簡単に洗い落ちないもの…。わずかな狂気を含んで降りた幕に、こちらもシニカルな笑いがこみ上げてきそうになりました。

Good!

 これは童話だろうか。それとも一般向けのファンタジー小説だろうか。
 どちらとも言い難い。
 童話であれば、こういった露骨な残虐性などは頻繁に見受けられるが、加えて何かの教訓があるのも常である。だが、この小説に果たして教訓があろうか。
 ファンタジーであれば、勇者次第で血は流せる。だが、この小説の勇者は果たして勇者であろうか。

 ところで、美しいものを破壊したいという気持ちは、万人はあらねど、ある人にはある。可愛い彼女の顔を思い切りぶん殴ってみたり、美しい風景がをズタズタに引き破ったりしてみたいと思うことは、そこそこあることだ。
 だからこれは、ある意味ではファンタジーではなく大衆文学とも言えるだろう。

 では勇者はキリトリセンを持つものや、それによって切り刻んだもののどこに惹かれたのだろう。モンスターや少女の玉肌が持つ美しさとは何だろう。残念なことにそれは明かされなかった。できることなら、その美しさのより精緻な描写が見たいものだった。
 それから、刻まれた後の、滑る血や黒ずんだ皮膚や腕の断面やちぎれた大腸や濁った眼球なんかが形作る美しいオブジェについての描写も見たかった。

★★ Very Good!!

読者企画〈誰かに校閲・しっかりとした感想をもらいたい人向けコンテスト〉参加作品としてレビューします。


〈まず通常レビューとして〉

 タイトルに『勇者』と入る作品は個人的に地雷要素が多いのが常で、本作もびくびくしながら読み始めた。そして第一話の途中で、それが杞憂だったことを知った。むしろ、個人的にはたいへん“肌に合う”作品で、約5000文字、原稿用紙にして十数枚という短さもあって一気に読み通してしまった。

 まず文章が整然と巧い。「Web小説」と呼ばれる界隈では見かけない類いの巧さだ。公募賞でも高次の選考に進むまで文章面で文句を言われることはないだろうレベル。

 『キリトリセン』のアイデア自体には先行例が思いつくが、それをよくアレンジして、読者の興味に繋がる独自性を生み出した。
 派手さはないがストーリー運びが堅実で、無駄がなく、まとまっている。ラストの幕の降ろし方も、手慣れた巧さを感じる。

 これをまとめきった作者の手腕を素直に評価したい。とても面白かった。自分評価で、限りなく★3に近い★2とした。
 
 
                                                               
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