01 101個異世界大興奮(世界の擬人化)

「ひかれ合うのは、人間同士だけだと思った?」

 世界が、そう言って笑った。

 まるで中世ファンタジーのような、臭いが、僕の鼻腔をくすぐる。


「引力は、世界と世界の間にもあるんだよ?」

「やす君、あなたと1つになりたい」


 彼女はそう言った。

 この子を、彼女と呼んで良いのだろうか?


「あたしは、異世界ファンタジー世界の、ユーミって言うの」

 

 てっきり、そんな世界の住人なのかとおもうでしょ?

 ユーミは、異世界ファンタジー世界『そのもの』だったんだ。


 ◆

 

 僕の中には、「異世界」って言葉には、定義があった。

 つまり、「普通の手段では、接することの出来ない何か」。


 高嶺の花な片思いの女の子だって、

 「会いにいけない方AKBグループ以外の」アイドルだって、

 僕にとっては、異世界だ。


 哲学者のアーレント先生も言っていた。

 人間を救うのは、他者であると。

 他者が居るから、自分が分かるのだと。


 僕にとっての異世界の定義は、そうだった。

 ……まさか本当に、異世界の方から、やってくるなんてね……。


 異世界転移や転生は、アグレッシブでいいよね。自分から会いに行こうってことだから。くよくよ君の僕には、異世界さんの方からやってきてくれたんだ。


 お仕掛け女房ならぬ、お仕掛け異世界。


 そして、彼女せかいは僕に触れる。

 甘いささやきと共に。


「さぁ……やす君、いらっしゃい?」



「……自分世界から来といて、そのセリフかよ」

 そんな憎まれ口と共に、僕はその世界の唇に接した。

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気まぐれ短編たち\(^o^)/ にぽっくめいきんぐ @nipockmaking

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