レベルアップが必要なのは、冒険者だけじゃない


 この異世界に来て1年。


 まるで、RPGゲームのような世界で、色々な戦いを経験してきた僕は、ついに手に入れた。


「勝手に戦闘くん」

 という名前の、装備1セットだ。

 ロングソード、プレートメイル、そして、「使い魔導機器」の3つがセットで、59800ユェンと、中々のお値段だった。


 早速装備してみる。


 まずはプレートメイル。編み編みの要所要所に金属板を少しつけた、金属鎧にしては動きやすい防具で、「全身が金属で重ーい!」なプレートアーマーとは、実はちょっと違う。

 なかなかのフィット感だ。


 ロングソードは、無駄な意匠を省いたシンプルなもの。

 まぁ、エントリー・モデルの装備セットを買ったし、剣としての機能はちゃんとしてるから、問題ない。


 そして、使い魔導機器「マレクサー」だ。

 体力全回復しそうな名前だけど、要は、僕の肩の上にプカプカ浮いて、魔法とかで支援してくれる、「使い魔」。


 このセットにはそれぞれ、人工魔導知能アーティフィッシャル・マナジェリジェンスが導入されている。略称はAM。

 僕が元居た世界で言う、人工知能アーティフィッシャル・インジェリジェンス、略称AIに、対応するものと言えるだろう。


 AMには、冒険者ギルドに登録している、有名な冒険者の戦闘履歴データが学習されている。


 つまり、このセットを装備するだけで、剣や鎧が、敵の攻撃を勝手に予測して、自動で応戦してくれる。


 当然、装備している僕の戦闘データ自体も、学習していく。

 使えば使うほど、僕好みに「賢く」なっていく、そんな夢のような装備だ。


 さて、これを装備して初の探索クエストだ!

 伝説の宝玉『フルツクリスタル』が眠る、アザア山岳へ!



 ……。



 ……。



「随分と早いお帰りでしたね。お風呂沸いてますよ」

 宿屋の主人が、樽のような腹をかきながら言った。


「……ああ」


「ものすごくお疲れのご様子ですけど。何があったんですか?」

 と、無神経に聞いてくる。


 を外しながら、僕は呟いた。


「……アザア山に、人語を話す鳥、『ハーピー』が居てね? 使い魔導機器のマレクサーが、回復魔法をハーピーにかけまくってさ……。にしたがって……」

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