見事な構成力と個性豊かな登場人物。

妖怪モノの話は数あれど、本作で見事なのはその構成力です。
一話ごとに完結する連作短編となっているのですが、毎回決められたパターンと言うか、お約束がいくつもあり、全ての話でそれをこなしていくきます。
そうなると縛りが多くてワンパターンになるんじゃないかと要らぬ心配もしましたが、様々な切り口で読者を飽きさせません。

そして構成力と同じくらい、登場人物が魅力的なのです。
ちっとも患者さんの来ない貧乏クリニックの医者、山吹先生。基本的にいい人なのですが、金欠のためいつも心に余裕のないお人です。
そんな山吹先生を慕ってやって来る少女、クロコ。お金の心配をしたり、ちょっと抜けてる先生に指摘をしたりと、このクリニックが今も潰れず残っているのは彼女の功績と言っていいでしょう。
その他にも毎回登場するガキどもや、代わる代わる出てくる妖怪達など、とにかく個性豊かな面々が揃っています。

妖怪と言っても決して恐ろしいものではなく、毎回読み終わった後には温かい気持ちになれるので、怖い話が苦手な方でも安心して読むことができます。

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