第6話 黒い家

黒い塊のような屋敷が見えたのはその時だった


あまりにも突然だったので急に地面から生えたような感じがした


 「あそこに家がある」彼が振り返って叫んだ


「待って」私も叫んだ 



こんな山の中で急に差し出されたような家は気持ちが悪い


彼はためらわず進んでいく 私のほうなど振り向きもしない


  私は必死で走ったが追いつけなかった


 空気が重くまとわりついてくるような気がする


 家というにはかなり大きい洋館だった


鉄でできた門をくぐり彼が扉をたたいた


 何度かたたくと少しだけ扉が開いて 「なにか」女の声がした


「事故にあったんだ 助けてください」 しばらくの沈黙 扉が重々しく開く音


 自分は不安でいっぱいになって彼の手に触れた


彼がぎくりとしたように振り向く その時「どうぞ」とくぐもった声がした



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