第14話 いつか会える

 何かくぐもった叫びを着たような気がしたが 麻子は踵を返した


両側には合羽を着た二人がいる


 「あなた達を沈めたのはあの人?」二人は首を振った


 ではあの人は前の奥さんしか殺していないのだ それで十分だけど・・・


 雨が降っているのだけれど水滴が地面に落ちる前に霧になって周りを煙らせていた


池も白く光って向こう岸の木々もぼやけて見える


 「どこに行くの」二人が不安そうに言った


「暖かくて明るいところよ」と言って呼吸して二人の手を握った


 手は冷たいが普通の人間の感触がした


 (どこにでも灯はあるからね)祖母の言葉を思い出す


 目を開けると月光の様に澄んだ光が見えた


  すぐ近くだ


  階段があり霧の向こうにドアがあった


 私はしゃがみこんで行った


  二人はもう不安げな表情をした普通の少女に戻っていた


 「ここから先は二人でいくのよ 私はまだいけないの」


  死者にも本能がある ここが帰るべき場所だとわかったのだろう


 「いつか あえる」 少女たちが言った


   「もちろん」 二人が笑って顔を見合わせてしっかりした足取りで階段を


 上った


  それから景色がまたぐにゃりと曲がった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る