第3話 口紅

 勝気な土佐犬のような勝気な妻だったと彼は言った


  派手で金遣いが荒かった  名前はエリカそれだけしか知らない昔の話をすると不機嫌になるからだ


でもそれ以来赤い口紅の女が私の中に住み着いた


 顔はっきりとしないが 栗色に綺麗に染めた巻き髪


きっと彼女は化粧が好きだ 自分を飾るのが大好き きっと私とは正反対なタイプだと思った


 私は地味で目立つタイプではない


いまだに彼が私のどこが気に入ったかわからない


 彼は会社では独自の秩序を守りキビキビと動いていつも人の目を引いた


黒い知的な瞳は時々狡猾に見えるそれでさえ魅力的だった


とはいえ彼は保守的な部分があった


 つまり昔ながらの女が家庭を守り男が働くというようなそんな平凡で古風なイメージ


そこは私も合意した


 きっと人生の後半のパートナーを探していたのだろう


一人で年を取って死ぬ気はない


 子供を持ち家庭という基盤を持つその権利は十分にある


今まで働いてきた分を考えれば・・・・


 そこに私が当てはまったのだろう


「私が好き」綺麗で手入れが行き届いた爪と髪彼女は彼の人生にできた亀裂きれつで


私はそれを埋める役目なのかもしれない

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