第4話 いびつな花

その時にまた花束が目に入った


まさか同じものではないだろうと思って眼をこらした


花束は同じに見えた 汚れたようなくすんだピンクの中に茶色のいびつな点がちらばっているのがなぜか


禍々(まがまが)しい


 「ここさっき通らなかった時かしら」おもわず言った


「そんなわけないだろう 一本道なんだから」彼が言った


 「でも あれ」 花束をさすと


 「偶然だろう」 と言ったがその声には不安が混じっているのがわかった


   「また事故かしら」 「たぶん」いいながら花の横を通り過ぎた


 あのユリのような花あれは事故現場に置くように決められているのかしら


 見たことがないけれどそれにこの辺に咲いているのもみなかった


 その時に車がガクンと揺れた


 フロントガラスに頭を打ったのは覚えている


  形のはっきりしない薄ぼけた角度に視界がぶれて 何かがひどく奇妙な感じがした


 でも何が奇妙なのかわからなかった その時は・・・・

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