第9話  細く長い氷

まさかと思いながら電話を取った


何もかもがおかしい


 速くどこかに行かなければ風の音が細く長い氷のような声を思い出させる


 あの時はあんなに長くかかると思わなかった


 電話を取った


隣でばたんと戸を閉める音がした


 自分は隣を見ないようにした


女が出ていく気配がする


 首を振って長く息を着くとかすかにふるえていた手の動きが止まった


電話はざあざあと言うばかりでどこを押しても反応しない


 その時に気づいた


電線 ここには電線がない 電信柱さえない この旧式の電話はとうの昔に死んでいるはずだ


 あの女たちはうそをついたのか?


振り返って汚れた扉を押した


 押しても引いてもあかない その時に人影が差した


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