27. あとがき

 30万字弱の長い作品を読んで頂き、有り難うございました。大変だったと思います。

 個人的には、終章のクールダウンの仕方が足りないなあと反省しています。体操競技での最後の着地で、足下がグラついた様な残尿感を感じているのですが、此れが私の実力なので仕方ありません。もし、良いアイデアが浮かべば、あなたに気付かれぬまま修正するかもしれません。


 さて、作品の序盤で、小野不由美先生の「十二国記」に似た雰囲気の場面が出て来ますが、其の情報源はWikipedia等のネット情報です。「十二国記」と似た感じに成ったのは偶然の産物です。

 其の「十二国記」の中で、卵果から子供が生まれると言う設定は、良く考えられた設定だなあと思いました。あの設定の御陰で安心して青少年に読ませられる作品に成っています。

 ただ、此の「世直し閻魔様」では、子供を産めない事を閻魔大王と旱魃姫が悩むと言うプロセスを必要とした為、“愛を深める儀式”を描く事が不可欠でした。

 其れを、カクヨムの掲載方針を逸脱しないように、どう書くか。物に例えるなどして配慮したつもりなのですが、カクヨムから指導されない事を祈るばかりです。何せ、私には、カクヨムから警告を受けて、掲載していた作品を削除した前科が有るもので(自虐笑)。


 また、作品中に出て来るパイエスト共和国は架空の国家です。アフリカ東部でフランスが植民地を営んだ歴史的事実は有りません。非常にナーバスな設定なので、架空の条件付けは多いに越した事がないと考えました。

 更に、米国・インド対中国の構図を採用していますが、お気付きの通り、現時点でアフリカを舞台にして、此の様な対立の構図は有りません。全ては、ストーリー展開の為に私が考えた1要素に過ぎず、こうなって欲しいと思う気持ちは毛頭ありません。


 ところで、此の小説を通じて、私が試してみたかった事は、娯楽小説と経済学の融合でした。

 娯楽物としての企業小説は枚挙に暇が有りませんが、私が融合したかったのは経済メカニズムです。

 特にイギリス経済学者のケインズも着目した“税金”と“金利”のメカニズムでした。ケインズが『雇用・利子および貨幣の一般理論』を記したのは、世界恐慌に全世界が見舞われた頃で、公共投資に依り不景気を乗り切ろうとした内容でした。其の後の半世紀は、此の理論が世界の政治・経済を動かして来たと言えます。

 此れを世界に遍く推し進める障害が国境と言うものだと、私自身は思うのです。

 昨今は、グローバル化の動きが鈍くなり、複数の地域でナショナリズムが台頭していますが、此れは不幸の連鎖が始まる入口だと思います。こう言う観点から、“貧困”を取り上げ、閻魔大王には大きな世直しをしてもらおうと考えました。

 つまり、此の物語の趣旨は、読者が読みたがる内容と言うよりは、私が押し付けたがっている自分の主張です。此の態度を改めないと、作家には成れませんねえ。とは言え、少しでも読者に受け入れて貰えるように、内容が堅くなり過ぎないように気を配ったつもりですが、読者はどのように反応してくれるでしょうか。怖いようで、楽しいようで、今は複雑な心境です。


 最後に、瑠衣の出産シーンでは、青瓢箪さんの「船乗りのヨメ」を参考にさせて頂きました。有り難うございました。

 また、終章に出て来る『マリン・スノーの伝説』は、松本零士先生の特別テレビアニメの題名から拝借しました。松本零士アニメが好きなもので・・・・・・。老荘世代の方は、往年のアニメ・タイトルを目にして、ニヤリとされるはずです。万が一、松本零士事務所からクレームが来れば、別の書籍名に変更します。

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やってみなはれ閻魔様2 (世直し編) 時織拓未 @showfun

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