よく「人生の最後に何を食べたいか?」って質問を目にする。答えは人によって様々だろうけれど、想い出深い料理を挙げる人は多いのではないだろうか。何故ならば、それは幸せの記憶だからだ。他の人にはなんてこともない料理でも、その人にとっては一口食べただけで記憶が蘇り、幸せな気持ちになれる。ましてやかつて自分が作った料理を娘が受け継ぎ、その味をしっかりと再現してくれていたらどれだけ幸せなことであろうか。綿々と受け継がれていく、その地方の、家庭の味。これもまた確かに、ひとつの風景だと自分は思う。
短い文字数で、過不足なく故郷への思いを綴った、素敵な作品でした。懐かしい家庭の温かさが、故郷の味によって表現されています。その「竜眼」という食べ物の作り方や味わいなど、細部をしっかりと写し取った賜物で、細部が物語を豊かにするというお手本のような作品でした。方言の柔らかさも、ノスタルジックな雰囲気を醸し出していました。
竜眼。知っている人は少ないかもしれない。だけれどたぶん、それはあまり関係がない。何処の家にもおふくろの味というものがあって、それは、続いていくものなのだ。そう、人の営みの、そのつながりのように。(心地よい読後感に浸りながら)
母から子へ受け継がれる伝統の味。しかし、受け継がれるのは味だけでなく、お母さんの愛もまた受け継がれていくのだと思いました。読むと暖かい気持ちになる、読後感の良いストーリー。竜眼は食べたことのない料理ですが、読んでいるだけでよだれがでてきて、思わず食べてみたくなります。
その家に伝わる味つけの伝統料理にまつわるハートウォーミング・ストーリーです。 みなさんも、お母さんのあの料理が食べたいという味があるのではないでしょうか? ぜひお読みになって、ご自身の故郷の味を思い出してください。