このタイムリープには、沢山の小さな勇気が詰まっている。
- ★★★ Excellent!!!
なんというか、一つの物語を読み耽りながらいろいろな感情が押し寄せてきて、それをレビューという形で端的にお伝えするのが難しいのですが…。
とにかく、素敵で素晴らしい作品でした。
小さな生き物にも細やかな愛情を向け、憧れの彼と同じ高校へ行くために血の滲むような努力をするひたむきさを持った美麗。
ただ自分に自信がなくて、一歩を踏み出す勇気が持てない、そんな普通の女の子が、タイムリープすることによって後悔のない高校生活を送ろうとします。
引っ込み思案なのにクラス委員を引き受けて彼に近づく勇気、自分を庇ってくれた人を守る勇気、体育祭でのアクシデントにもめげずに走り抜く勇気、藤倉君を庇う勇気…。
後悔したくない、ただそれだけのために彼女はひたむきに前へ進んでいきます。
読み進めながら、彼女のひたむきさを応援し、その努力が実を結ぶことで一緒に幸福を味わうことができました。
ところが、彼女はそのひたむきさゆえに、彼を想う純粋な心に少しずつ染みを広げていくのです。
嫉妬、自己嫌悪、エゴイズム。
誰の心にも巣食うその感情に苦しむ彼女を、読み手である私は胸を締め付けられるような思いで見守ることしかできません。
そして彼女が本来あるべき姿に気づいて後悔したとき──
そこから先はさすがに書くことは控えておきます(笑)
けれどもこのタイムリープで彼女が得た感情や経験は、引っ込み思案な彼女を変えたはず。
沢山の感情を美麗とともに味わえた幸せ、二人の未来を見通せた幸せ、素敵な物語に出逢えた幸せで満たされた気持ちになったのでした。
皆さんも、この充足感をぜひ。