祝、書籍化!多くの人の目に留まってほしい。

日本という国は『同性愛者』というだけで殺されるような国ではない。だけど意識的、無意識的に行われた言動によって命を絶ってしまう人たちは大勢いる。無関心を装いながら、いざ渦中に巻き込まれたら差別する。全てのマイノリティにとって日本は生きにくい国だ。主人公の安藤は、男性が好きという一点を除いては極々どこにでもいる若者だ。だが彼もいうように『同性愛者』というだけで全てが集約され、独り歩きした想像の産物に堕とされる。直接言われていい気分ではないが「気持ち悪い」という感覚は誰にでもある。同じ境遇のマイノリティの中でさえあるのだから。これは拭えない感情だろう。この物語は、二人の同性愛者の若者を通して、生と死を見つめる。主人公が踏み止まれた幸運。友人という宝物がいたことの大きさ。羨ましい。羨ましいことこの上ない。

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