違う人と肌を重ねても、鮮明に蘇るのは、あの人の声やぬくもり。景色を眺めても、よく行く店に訪れても、蓋をした記憶の箱からこぼれ出る。別れてしまった理由はわからない。でもそれがどれほど愛おしかったものなのかは、主人公の右手を見つめる仕草が物語っていて、胸が締め付けられた。