幻想の台座から降ろされた感情の方へ

これはいわゆるBL小説ではない。

性欲や「萌え」のような情動は、大なり小なり「ファンタジー」によって成立している。
純くんのマコトさんに対する感情には、「年上好き」などの、ある種の情報によって基礎づけられたファンタジーを必要としているが、異性を愛する純くんには幻想の基礎を必要としない。

それは純粋であるがゆえに、異性愛者の彼女とはとんでもないすれ違いを生じる。
しかし、この物語の恐るべき点は、そのすれ違いをがっちり受け止めたまま、幻想の台座を惜しげもなく破壊して、感情の純化を図るところだ。

いったい何が彼ら彼女らをそこまで激しい闘争のなかへ、希望を伴って臨ませるのか。
陳腐だが、それは「愛」としか呼べないものであろう。

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