過去と未来を繋ぐもの――それは人の歴史と、恋!!

なかなか珍しい作風の物語で、web小説では見かけないタイプの作品だと思う。

本作は恋愛小説でありながら、大学の論文をつくるために『上杉本』という屏風について学んでいくという歴史学的なストーリーラインで、そのタッチがミステリー風味ということもあって、大変リーダビリティがある。参考にされる文献も実在の物であり、歴史を紐解きながら少しずつ考えをまとめていく様は、まさに大学で講義を受けているよう。文章も分りやすく、難しい説明や用語もすんなり入ってくるので、安心して読み進めてほしい。

そして、歴史学とが別に、主人公の京子が、意中の相手となる啓一君に振る舞う料理の描写はとくに秀逸で、本当にお腹が減って仕方がなくなるので飯テロ的な小説でもある。炊き込みご飯が本当に美味しそうなんですわ!

そして、ちょっと不器用な二人が少しずつ距離を縮めていく様は甘く、登場人物全員が優しさを持っているので安心して読み進められる。

そんな一粒で二度も三度も美味しい一風変わった恋愛小説――

みなさんも、長い日本の歴史を感じながら、二人の恋を見守ってみませんか?

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