キャラクターの等身大の描かれ方、専門的な研究内容など、リアルな大学生活を背景に、好感を持ちながら読み進められる恋愛模様。
また、美しさを感じられる数々の事柄は、芸術であったり、料理の美味しさであったり、二人の恋も勿論のこと、家族愛でもあったり。
終盤、京子が啓一の家庭環境に触れ、その救世主となる様は、まさにレビュータイトルの如く、恋が愛を救う瞬間である。
誰かを想い、誰かの為に行動する、美しさの欠片はここにもあった。
激しく恋い焦がれるような展開はない、料理だって焦がしてしまっては台無しである。
ある意味、幼く。ちょっぴり大人。
甘く優しく満たしてくれる、そんな読み応えのある物語である。
リアルな大学生活と恋愛を描いた作品。といっても、恋愛小説というほど恋愛の割合が多くないので、いわば「大学生活小説」です。
研究発表に向けた勉強とか、いいなぁ、大学生やりたい!って思う。しっかりと研究して、ちょっと恋もして、最高の大学生生活ですな!(←誰だお前は)
安心して読める文章力と、ストーリー運び。別に、燃えるような恋だったり、波乱万丈のストーリーじゃないけど、それがいいんです。リアルな生活の中にあるドラマが、丁寧に描かれていて、その世界に入り込みます。よし、大学に行くか!(←だから誰だ)
この春から大学に行く方なんか、ぜひ読んでほしいですね。そして、キャンパスライフの夢を描いてほしいですね。しっかり勉強して、素敵な4年間を過ごしてほしいですね。
私は今後、あの屏風絵を何かで見かけたら、この小説のことを絶対に思い出しますね。
歴史は小説より本物のミステリー。アカデミックな世界での研究の面白さを、まるでミステリー小説の謎解きのようなテイストで紹介する面白い作品です。
女子大生がちょっと気になる男の子や周囲の人の協力を得ながら学問の世界の謎解きに挑戦し、その中で芽生える新たな感情……。
文化・仕事・恋という人生の生きる道へ続くことになる出会い、そういう大学生活のワクワク、ドキドキが詰め込まれています。
これから大学を目指す女の子や、大学で専門へと進もうとしている女の子に是非おすすめしたい作品です。
もちろん学生生活から遠のいてしまった人でもドキドキしながら楽しめることと思います!
なかなか珍しい作風の物語で、web小説では見かけないタイプの作品だと思う。
本作は恋愛小説でありながら、大学の論文をつくるために『上杉本』という屏風について学んでいくという歴史学的なストーリーラインで、そのタッチがミステリー風味ということもあって、大変リーダビリティがある。参考にされる文献も実在の物であり、歴史を紐解きながら少しずつ考えをまとめていく様は、まさに大学で講義を受けているよう。文章も分りやすく、難しい説明や用語もすんなり入ってくるので、安心して読み進めてほしい。
そして、歴史学とが別に、主人公の京子が、意中の相手となる啓一君に振る舞う料理の描写はとくに秀逸で、本当にお腹が減って仕方がなくなるので飯テロ的な小説でもある。炊き込みご飯が本当に美味しそうなんですわ!
そして、ちょっと不器用な二人が少しずつ距離を縮めていく様は甘く、登場人物全員が優しさを持っているので安心して読み進められる。
そんな一粒で二度も三度も美味しい一風変わった恋愛小説――
みなさんも、長い日本の歴史を感じながら、二人の恋を見守ってみませんか?