暗い夜も2人であればあたたかい

 自分は一体何者で、何をしたいのか。何をしていいのか。
 それを考えずに生きている人も多いでしょう。だからこそ、それを考えなければいけなくなったとき、何を考え、どんな結論にたどり着くのでしょうか。

 歪な瞼をもって生まれたイーデルト・クローデリア。そのために祝福される「神の使い子」か、疎まれる「異界の迷い子」か、夜の明主に回答を求めることになります。
 私は一体どちらなのか? と問う彼女を明主は「自分で決めろ」と突き放します。
 初めて自分で選ぶ権利を与えられた彼女は戸惑い、考えるのです。
 私は何物なのか。何者でありたいのか。

 不器用で優しい夜の明主。
 本の世界しか知らないイーデルト・クローデリア。
 そんな2人の夜だけの語らいは、周囲が夜闇に包まれているということを忘れるほどあたたかいものです。

 視点はイーデルト・クローデリアですが、選択したのは彼女だけでなく夜の明主も同じ。そう思うと、とても微笑ましい気持ちになります。
 とくに、おまけにとても癒されました。真っ暗な夜も2人であれば、寂しいものではないのだろう。
 そう思わせてくれる美しくて、やさしい神話です。

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