ヘウムノに通ずる道

作者 白里りこ

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★★★ Excellent!!!

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「ユダヤ人問題における最終的解決」法は当初バス内でのガス殺でした。後に目標数値が拡大され『絶滅収容所』そして一度に2000人レベルで殺害できる大規模ガス室が作られましたが、その生き残ったスタッフたちは「知っていても何ができたか」という永遠の課題を背負ったまま戦後を生きることになります。(後期はカポと呼ばれるユダヤ人スタッフが大半でしたが) 「平和に対する罪」「人道に対する罪」という言葉がいかに空虚なものか教えてくれる良質の短編だと思います。無駄のない潔い文章力に感嘆。

★★★ Excellent!!!

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「人間というのは哺乳類じゃなくて、むしろ虫に近いんだよ」
という一節を思い出さずには居られない、恐怖を感じました。

それでも僕がこの話を「白い」と評価するのは、白が平和を求める色だからです。

平和を、保つとか維持するのではなく、求める。それが白の本質です。
そのためには滅すべき悪徳が不可欠です。
悪が無ければ平和を求めることは出来ませんから。

彼や彼らは間違いなく平和を求め、そのために悪を捏造しています。

これが僕にとってこの話が「白い」理由です。

★★ Very Good!!

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自分が同じ状況に置かれたら、「加害者」にならない保証なんてどこにもないってこと。
そして、これがほんの数十年前に本当にあった出来事だということ。

作者様は「これ以上怖い話を書ける自信はない」と書いているけれど、僕も「これ以上怖い話を知らない」。

★★ Very Good!!

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 組織的な情報操作、事実の隠蔽やプロパガンダ(政治宣伝)の影響もあったかもしれません。

 私の知人も共同住宅の党派がらみか何かで長年、集団ストーカーや生活プライバシー剥奪、地上げ屋的な嫌がらせのような被害にあっていたそうです。後にそのことが発覚すると加害者の一人が逆ギレして騒音を立てたりするようになり、周囲の住人が何人も引越してしまいました。しかしそれまでは、被害にあっていた知人の方がとりあってもらえず、変人扱いされたりしていたようです。

 組織や集団は人間の力を、良くも悪くも増幅します。惰性がついて皆がヤバいと思っても誰も言い出せず、止まらなくなってしまうこともあります。悪者を懲らしめていたつもりがリンチ事件の加害者になっていたり、食わせて神輿(みこし)を担がせていた連中が暴走して、一緒に心中させられる破目になったり……。ホロコーストにおいても、何度か映画化された『スタンフォード監獄実験』のような、集団的精神病理が働いてしまったのかもしれません(『ミルグラム実験』というのもあったようですね)。

 科学技術だけでなく、心理技術や組織技術の悪用・誤用も要注意です。毒ガス、洗脳、『省庁』組織などで凶悪犯罪を行ったオウム事件もそうでしたが、現在でも新技術による犯罪・事故や特殊詐欺、組織的不祥事などは後を絶ちません。一人一人の罪は小さくても、戦争ともなればその人達自身も含め、数百万人が犠牲になるのが恐ろしい。ニーメラー牧師の詩を思い出しました。

 強制収容所で虐殺に加担した親衛隊員達も、その冷酷さを買われて(?)か、後に武装親衛隊髑髏師団という戦闘部隊に編入され、東部戦線に送られて人員がほとんど入れ替わるほど損耗し、大部分が生還できなかったそうです。戦争で冷酷粗暴、無思慮で無責任な人々が『淘汰』されたおかげで戦後の繁栄があったのだとしたら、それも恐ろしい。もし同様の状況が…続きを読む

さんがに★で称えました

さんがに★で称えました

★★★ Excellent!!!

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わずか、七七七文字で構成された今作。
概要に「これ以上怖い話は書けない――」とあり、興味津々で読みはじまえると……鉄槌で後頭部を打ち砕かれたかのような衝撃を受けました。
読了後、胸に去来するのは間違いなく「怖さ」でした。
オカルトやホラーの怖さではありません。いや、比較にならない怖さを味わってしまいました。

この分量だからこそ、読み終えた後にアッと口を開いたまま、しばらく身じろぎすらできないと思います。

このような短編に出会えたことを、感謝しております。
ありがとうございます!

★★ Very Good!!

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トラックへ『積み荷』が運ばれる。運転手は目を閉じて一度たりとも振り返ることはない。貨物が閉じられれば運転手は、運転手の仕事としてアクセルをふかして目的地へと向かう。それだけ。何故ならば、それが上官から言いつけられた仕事だから。
「きみの仕事は運転手だ」
何を運ぶのか、何をやっているのか、そんなことを運転手が知る理由はない──と、自分に言い聞かせ、彼は再び仕事をするのだろう。
運転手なのだから。

ラスト、その悍ましさに背筋が凍りついた。

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★★★ Excellent!!!

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男が目を背けたことが罪か
言われるがままにアクセルを踏んだことが罪か
男に命じた者が罪人なのか
この手法を考案した者が罪人なのか
この地獄を生みだした者は罪人ではないのか
ではその者を選んだ民衆は罪人ではないのか

かつて大戦の最中に行われたこれらの行為が、悪であり、罪であることは明白だ。
けれど、誰が裁かれるべきなのか、誰が裁くべきなのか。
それをこの機に、もう一度よく考えてほしい。

★★★ Excellent!!!

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積み荷の正体は明かされません。しかし、読んでいる途中でうすうすと気付きます。トラックの行き先がどこなのか、徐々にイメージが固まっていきます。予感を否定したいという願いのようなものを感じながら、しかし、あっという間にトラックは目的地に着き、読者は戦慄の終着点へとたどり着きます。

作者様は、紹介文で「これ以上怖い話を書ける自信がない」と書いていらっしゃいますが、「運転手」が生きる恐怖時代のことを知識として知っている者にとっては、まさに、この世で最も恐ろしい話のひとつです。

作中の恐怖時代が到来するきっかけは、法治国家には無縁の革命などではなく、法治国家で機能していた選挙制度にあったこと。恐怖の世界に放り込まれたら、大半の人間は「運転手」のようにならざるを得ないだろうということ。その二つが思い浮かび、この短い作品を読んだ後も、しばらく震えが止まりませんでした。

さんがに★で称えました

★★ Very Good!!

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知ってしまったときの恐怖と後悔よりも、知ろうとしなかったことの方がその何倍も恐ろしく自分を苛む。
けれど知ったとして、彼はどんな道を選ぶんだろう。
ごくごく短い物語の中に、さまざまなことにたいする怖さが渦巻いて……。
作者さまも言われていますが、わたしもこれ以上に恐ろしい物語をカクヨムで読んだことはありません。

★★ Very Good!!

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振り返ることを許されない過去を、
植え付けられた運転手。

いっそのこと、
死と隣り合わせの戦場に行った方が、
何も考えずにいられたかもしれない。

この戦争が終わっても
心を封じたまま
生きていかなければならないのか。

戦争とは何なのか、正義とは何なのか、
思い悩む作品です。

ご関心をお持ちの方、ご覧になってください。


★★★ Excellent!!!

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これは過去の戦争犯罪で、許されざる行為だと弾劾するのは容易ですが、自分が主人公と同じ立場になったときに、果たして断固拒否できる状況にあるのか、あまり自信がありません。
平和な時代にはありえない常識がまかり通り、人としての良心を殺してしまう戦争は行ってはならないと改めて思いました。