苺のロールケーキのように、ふんわりほんわりと優しい物語

この温かな読後感は物語を多読する最近でも珍しい。
それほどにこの『僕と君』は、慈しみに満ちた優しい物語だ。

詩的でありながら、要所の知識はきちんと押さえてあるのも筆者の力量であり、この物語を柔らかに象る一つの要素だろう。

君と君。主人公には二人の大事な「君」が存在する。
実は一方の君が生まれるまでは、主人公自身が「君」だった。
子供が生まれて初めて、彼は「君」の座を譲り渡すのだ。
まるで入れ子形式のような、穏やかな君の転換。

「僕」はそれから、知り初めし「君」と長く付き合ってきた「君」との、二つの宝を見守る立場になる。

この物語を読めば、棘々した気持ちも、ささくれだった心も、くるりと丸められる気がする。

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