僕と君

六月雨音

1 君と君


僕は君と結婚するまで、いつも君のことを「きみ」と呼んでいた。

いや、結婚してからも、そうだった。


そして君も、年下の僕のことを「君」と呼んでいたから

僕らはまるでたまごのように「きみときみ」合戦を繰り広げていた。

あの子が生まれるまでは。


君が生まれたから、僕はパパ、元「君」はママになった。



ママは君が生まれる前に、僕にこっそり言ったんだ。


「ねぇ、この子が生まれて、どんなにかわいくっても

私のいちばんは、いつまでも君だからね。忘れないでね」って。


でもね、瞬時に忘れたみたいだよ。


ママは今でも「人生でいちばん嬉しかったこと」を訊ねられたら

「君が生まれた時」って、答えているもの。


すっごい威力だな。

僕は、あっという間にノックアウト。


君は生まれながらに、僕のライバルだ。女の子だけど。






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