筒井筒の恋はしかしゆるされることなく……

 現在の最新話・三章(4)までの内容でレビューを書かせていただきます。

 平安時代のある貴公子と幼馴染みだった女性との切ない恋模様を描いた物語です。
 藤原義孝は誰もが認める好青年で、美しく、和歌がうまく、多くのひとに愛されています。でも彼が欲しいのは幼い頃結婚の約束をしたある少女だけ。彼女との恋を守るためあれこれ画策しますが……。

 これが現代日本だったらとっくに実ってハッピーエンドを迎えているであろう恋。
 当時の貴族社会が二人をゆるしません。
 二人ともあんなに互いに恋い焦がれて時を待ったというのに……。二人はすれ違うばかりです。
 二人の心情がとても丁寧に描写されているので、感情移入して一喜一憂してしまいます。
 もどかしい。本当にもどかしいです。
 せめてもう少し……あるいはここでこんなことがなかったら……と二人の運命を嘆かざるをえません。
 本当にこれで彼女は幸せになれるのかしら、と心配してしまいますが、家のため、恋心が犠牲になる時代だったんだろうなあ。かといって、彼女の父・惟正の言うとおり、なんとか結婚したとしても将来は不安だらけなわけで……。
 何のフラグが立てばハッピーエンドになれるんだ!

 周りを固める登場人物もみんな魅力的です。
 私が特に好きなのは明るく能天気な道隆です。彼の出番がまた回ってきますように!

 作者様の平安時代に関する造詣の深さにも敬服いたします。
 一章でずっと話題になっている彼女の名前、裳着を機に名前が改めて授けられるんですね……! 勉強になります。なんだかドラマチックで素敵な風習です。

 これからも更新楽しみにしています。