その8「手元に置くべきは」

 合計の話数が10話になり、とうとうここまで来たのかと自分でも驚いています。これも皆様のおかげです、本当に有難う御座います。では早速、今回は前回の延長のリズムの変化の方法と資料の話をしましょう。リズムを取る事が出来ても、単調なものが続けば誰しもその後の展開がある程度は読めます。ストーリーに当てはめて例示すれば、今まで無双してきた主人公はその先もきっと立ちはだかる敵を何だかんだで倒すでしょうし、あるボスを倒すとその後にはもっと強いボスが出てきてそれを倒すとまた…みたいな。これらは全て一定のリズム調ではありますが、そのリズム自体は極めて簡素です。ではそこを面白くするにはどうすればいいでしょうか?主人公を挫折させてみたり、日常話を間に挟んだりという意図的な乱しも必要です。ストーリーについてはいつか似たような事を言ってた気がしますが、まぁいいでしょう。していなかったら後でまた説明するだけですからね。


~リズムに変化をつける語彙の使い方~

 ストーリーではあんな風な例になりましたが、語彙の面での単調なリズムとは何でしょうか?例えばこんな感じです。まずは「同じ言葉がよく続く」パターン。誰々が~と話すと、誰々も~と話した。誰々が階段を上ると、続いて誰々も上って行った。という感じ。次に、「他と差別化されにくい曖昧な表現」のパターンでは、~はうれしく思った、~は喜んだ、~は楽しく感じた。というあまりにも大雑把すぎてその時々に適切な表現があるにも拘らず、おおまかな事で括ってしまう。という物です。

これらを解決するにはどの様な意識でいれば良いのでしょうか?


~小説の表現は遠回りだけしていれば良い~

 一つ目は類義語を出来る限り使用するのが簡単でしょう。と、言っても本来このような事は所謂「語彙力の高い人」にしか出来ませんでした。ですが今は何と便利な事か「類義語検索サイト」が複数あります。面倒でしょうが、慣れるまではここをひたすらこき使うのが最も簡単でしょう。これは二つ目の曖昧な表現の解決にも役立ちます。用例や、有名な作品の一節を参考に組み立てていきましょう。でも、盗作はいけません。できる限り多彩な言葉を使うことさえできれば、一見単調な話も読み手がのめり込んでくれるようなものに仕上げることが出来ます。


~資料をいかに利用するか~

 さらに、私が個人的に思ったのは「小説書きは資料をあまり利用しない」という点です。自分だけの物語を書いている最中はどうしても周りが見えなくなり、自分の構想を最優先に組み立てていくでしょう。確かにそれは大事ですが、絵描きを例に取ると、一つのカップを描くにも実物を用意したり、いくつもの画像を検索して使用しています。この事をより体感的に知るにはこのような例が一番でしょう。「大型風力発電用の風車の羽は何枚ですか?」誰しも一度は「風車」を直接的にでは無いにしろ見たことがある筈です。映画、アニメ、ゲーム、広告…等々。でもいざ思い出そうとすると思い出せない、4本だった?いや5本?答えは3枚です。理由は多々あるようですが、ここでは省かせて頂きます。このように普段生活しながら当たり前すぎて見逃しているリアリティを物語に反映させることで、より書き手は詳しい表現が可能になります。それはつまるところ文字数を増やして読みごたえを持たせたり、読者に違和感を持たせない書き方が出来るのです。もっと言えば小説の世界でこのような現実世界を描写する機会はむしろ少ないでしょう。だからこそ普段触れ合わない物が物語に出てくる事も多々あるSFやファンタジーではより一層の配慮が必要です。まぁ、とは言っても結局の所、この一番の利点は書き手が状況を遠回しに書くときにとても重宝するという事であって、読者への効果はどちらかと言えば二の次です。書いている最中に一人、表現に悩んで過ぎていく時間ほど勿体無いものはありませんからね。


まとめ:語彙力が欲しいのならばとことん検索を利用して、適切な言葉探しをしよう。また、情景や効果などは先人の知恵として、有名な作品を参考にしたり、画像や実用例といった資料を参考に作成していこう。これらはすべて資料活用の能力として実生活でも役立つ上に、一から学ぶよりも効率的な執筆作業が出来るようになる。


次回:最後に

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