その2「幼馴染はもう古い」

ヒロインの話をしよう。ヒロインといえばあれだな、めちゃくちゃかわいい女の子がこう…主人公を彩る、まさに両手に花、黒一転、これを俗にハーレムと呼ぶだろう。男なら誰しもかわいい女の子にちやほやされたい、先ほど話した主人公の話とも被るが、ハーレム物を読んでいる人で現実もハーレム状態で生きている者は居ない。そう断言しよう。だからこそこのヒロインにはある意味主人公以上の配慮が必要になってくる。最近では○○がかわいいだけのアニメなんて言われるほど、ストーリーよりもキャラクター性を重視するファンが増えている。これはラノベにも言える事だ。

さて、先ほどは読者の生き写しを作れと言ったが、今回は真逆だ。理想をとことん突き詰め、誰しもが羨むようなハイスペックなヒロインを作ろう。主人公のマイナス点に準拠して、例えば主人公が知識型(社会で役に立たないほうの)だった場合は一般常識に強く、ツッコミを入れる役にしても良いし、覚醒関連で情緒不安定な設定があれば母性に富んだお姉さんキャラにしても需要があるだろう。

だがここで気を付けてほしいのは「ヒロインの総数が替わっても総技能量は変化しない」という法則だ。これも例えを使って話したほうが分かりやすいだろう。

例えば、君が主人公だとして、その周りのヒロインを3人配置するとしよう。だがその三人がいわゆる完璧キャラでなんでもこなせるなら?それは各ヒロインの個性を殺すだけでなく、極端な話3人中2人が途中で死ぬなり別れるなりしていなくなっても物語としてなんの影響も出ないことになる。なぜなら元々1人だけで十分だからだ。

これでは主人公が特別な感情を、去ったキャラクターに持たない限り、呼び戻す理由付けすらも悩む事になる。では先ほどの理論通り、総技能量を考えて3人配置してみよう。主人公は家庭型と仮定して、1人目は知識型、2人目は戦闘型、3人目は情緒型だ。もっとかみ砕いて魔法ファンタジー風に言えば、主人公は一般人。ヒロイン1は学者や博士、ヒロイン2は優秀な剣士や騎士、ヒロイン3は主人公を内面的に支える妹キャラや一番親密な友人として置く事が出来る。

例えば1が居なくなれば主人公のパーティは目的にたどり着く手がかりを解読出来ないばかりか、簡単な謎解きで最悪詰んでしまうかもしれない。2なら主人公たちは中ボスあたりに蹴散らされて終わりなる。3は蔑ろにされがちだが、こいつは主人公に対してではなく「読者」が自分を頼ってくれる人がいるとか、理想の女の子がこんなにも優しくしてくれるという満足感を与える役目をしている。元の意味で一番ヒロインらしいのは3だ、とも言えるだろう。

こんな話をしていて、一番ヒロインらしいのは何かと問われると、やはり外せないのが幼馴染キャラだ。しかしこれも最近はさっぱり見ない。何故かと言えば理由は簡単だ、時代の流れもあってか「読者に幼馴染が居ない・もしくは幼馴染というキャラクター性を現実に持った人を知らない」という事態になってしまったためだ。

よく解らない人は自分に幼馴染がいたか思い出して欲しい。決してただ家が近い女の子を思い出せと言っている訳ではない。幼いころから一緒に遊び、いつしか一緒にいて彼女のような立ち位置にいるような娘の事だ。どうだ?思い当たるか?

このように幼馴染という封鎖的コミュニティ内で発生する特異的な関係はもはや存在しないのだ。そんな人に幼馴染キャラっていいよね?と聞いても「幼馴染って何?」としか返ってこないだろう。その反面増えたのがMMORPGブームで流行った「ゲーム内で出会ってそのあと現実でも出会って仲良くなる」というパターン。現実でも…までは流石に無いだろうが、誰しもオンラインゲームをしていて心に残る出会いをした経験はあるだろう。上手くキャラクターを作る時にはうまく読者の「あぁそんなこともあったな」という記憶や経験に進んでアクセスしていくのが大事だ。そうすれば現実では振り向いてくれなかったあの娘が、このラノベでは僕にやさしくしてくれる!と、勝手に脳内で同一化してその物語を読み進めるきっかけになってくれる。


まとめ:ヒロインはいくらハイスペックなキャラでも構わない、理想を好きなだけ追及しろ。しかし完全万能キャラを作ってしまうと後々困るので、少なからず欠点を設定するとか、ヒロインの数を増やしてその役目を分担させるとより読者にウケる。


次回:世界観の話

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