心理学で語る、「読まれるラノベ」の作り方

ネロヴィア (Nero Bianco)

その1「主人公は読者の鏡」

物語に重要視される主人公だが、昨今の主人公の傾向はどうだろうか?旧来の最強無双系と呼ばれる主人公は殆ど残ってはいない。では何が増えたか、それは「底辺」である。何を言っているのか解らないだろうが、具体的に言えば。料理・家事が得意、成績は良くない、物理的に非力、同性の友人関係(ヒロイン除き)は少ない、何か大きなコンプレックスを持っている、物語を一変させるチート級の能力を隠し持っている・またはいた、得意分野があってもそれは社会生産活動には生かせない物と、いった具合だろう。

話は少し逸れるが、これを見ている君は上に当てはまるものがあるだろうか?もし成績優秀、運動万能で友人関係も多いが、忙しい毎日の合間を縫って趣味の小説を嗜んでいるのならば、これからの話は聞かなくても良い。むしろ読み物なんてやめて友達を誘ってボウリングやカラオケにでも行くべきだろう。

で、だ。残った諸君はどうだろう?上に当てはまるものが少なからずあったに違いない。うん、恥じることはない。むしろそのままでいてくれた方が我々書き手にとっては良いカモになってくれているのだから。

さぁ、ここでこのタイトルが回収できただろう。そう、ありきたりな主人公の性格は読み手に酷似しているのだ。最低でも一昔前まではそんなことはなかった。腕っぷしの強い主人公が敵をバッタバッタと倒す、そんなものがウケていた。著作権上細かい名前までは出せないが、長く続いている漫画や小説を思い浮かべれば当て嵌まるだろう。ではそんな社会最底辺の読み手に合わせた主人公が活躍できるのか?といえば答えはNOだ。ほかのキャラクターに埋もれて死んでいくのみ、これでは主人公とは呼べない。ここで出てくるのが覚醒やら発現やら血統やらそんな話だ。何の変哲もない一般人が実は最強クラスでしたーっというオチ。それを盾に次々敵を倒して万々歳でヒロインからはちやほやされる。ありきたりなストーリーだ。

ではなぜこれらが読まれるのか、それは読み手の欲と関係している。残念だがあのようなラノベファンたちは努力はしないが他人より勝りたいと考える人間ばかりだ。人生そう甘くなく、勝利の美酒は努力しなければまず手に入らない。

もっとわかりやすく言おう、人生にはお金が不可欠だ、だが全うに生きても生涯賃金は3億程度、それも毎日毎日汗水たらして働いて手に入る金額だ。

だがそれがもしも宝くじなんかで3億円がころっと入り込んで来たら?あぁ、働かなくともいい、好きなものは買える、なんとも夢のような生活…。安心してほしい、こんなのは文字通り、君たちにとっては「夢」だ、寝ているときに見る方のね。

ここまで言えばわかるだろう。今の主人公たるキャラクターが読み手の欲に左右されること、そして物語を通して何の力もない読者は主人公のように強く、富と名声得る仮想体験をしながら読み進めていく。読めば読むほど主人公は沢山の異性を侍らせ、最強の名を思うがままにする。これほどまでに読んでいて満足感と優越感に浸れる物はない。そしてそれはいつしか幸福感となり、また次も読もうという期待へと変化するのだ。


まとめ:主人公は読者の生き写し、できるだけ無能なやつを作れ、でないと読者が嫉妬する。そこに努力以外で手に入る最強要素を持たせてやる、そうすればもう立派な読者を集めるキャラクターを作れるようになる。


次回:ヒロインの話

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