その3「異世界って何だよ」
さて、ここからはキャラクターの話からは一歩引いて、彼らを包む世界観についてお話します。ファンタジー然りSF然りラブコメ然り、どのお話にもその所属する世界が必ずあります。現代日本であったり、宇宙だったり、過去だったり未来だったり別の世界だったり。なかなか作品を読んで「うわ!これ日本が舞台じゃん!読むの止めよう…」のように世界観が原因で読まれなくなる事はかなり稀でしょう。ですからここからは格別こうすべきという模範はありません。好きに構成していけばいいのです。しかし手引きとして提示することは可能です。まずはロケーションから始めましょう。これはつまるところ物語に出てくる建造物や特定の場所の事です。ここで注意すべきは「こだわりすぎる」事なんです。いや、いいんですよ?深く考えて世界を構築するのは楽しいですからね。ですがそのロケーション、ちゃんと地図に出来ますか?主人公が今いる場所から例えばお城はどの方角ですか?町は?ほかの施設は?
言い当てられるなら良いでしょう。でも解らないのなら?一番最初に世界観という基盤を作る際、昂じて非常に細かく作ってしまうケースが見られます。そう、それはまるで地図を見るように。ですがこうしてしまうと自分の世界観の縛りのせいで新しいアイディアを書き足せなくなったり、物語の整合性が取れなくなることがあります。
ですから、大まかな世界観を作った後は自らがその世界を冒険するつもりで構築していきましょう。また例にとってお話しします。
主人公たちが初めにいた村を作成し、ここでのイベントが終わった後、城へ向かうとしましょう。この時初めて物語に城があるという概念が生まれ、世界が広がります。
逆に最初から村の北には城が、南には砦が、東には洞窟が、西には海がと設定したとしましょう。次に主人公たちは城に向かうわけですが、そこに「南の砦、東の洞窟、西の海」という情報は必要でしょうか?そう、ここで気づいて欲しいのはこれらは不要な情報だと言う事です。あなたの作った世界ですから、本人は自由に旅できるでしょう。ですが読者は旅行者のように初めて訪れる訳です。初めから全て説明しても理解できるはずがありません。城についてから「砦に行け」というイベントがあるとして、そこで初めてその砦は城の南にあると説明すれば良いのです。読者はあなた方が思う以上に鈍感で忘れやすいのですから、世界観に置いてけぼりにしないようにしましょう。次に話すのは使い切りの場所についてです。場所を設定するのは簡単ですが、もしかしてお使いのように一定の場所を行き来させてはいませんか?
例としてダンジョンを挙げましょう。1から5階まであるダンジョンを冒険するとして主人公たちの最終目的地は5階です。ですがそれを1.2.3.2.3.4.3.4.5の様に何度も行ったり来たりさせては、読者が混乱するだけでなく、マンネリやデジャブを生みます。頻繁に移動するなら本拠地と旅先の行き来程度にしましょう。また旅先の一定の場所に長く留まりすぎるのも避けるべきです。そこでやることが沢山あって留まるのら一向に構いませんが、それが終わったら少しでも次の舞台へと場を移しましょう。テンポよく物語は進みますし、読者を飽きさせない最良の策になります。こう言えばなんだか長距離を移動しなければならないように聞こえますが、ある部屋の片隅から中央へ移るとか、隣の部屋に行くという程度で十分です。一度使った場所は何度も使わずに、過去へと流してしまいましょう。
そうそう、ファンタジーと言えば異世界ですね。最近はタイトルで異世界推ししてくるのが増えました。いや、だから何なんだとお思いでしょうが、実はこれには大きな効果があるんです。試しに王道ファンタジーでも読んで下さい。まずタイトルに異世界で~と付く事はありません。その世界で主人公は生まれ、全てはそこで完結します。さて、ここでお気づきでしょうか?そう、その世界で生まれ、完結させてしまうと想像力の足りない自己陶酔目的の読者は主人公としてその世界で活躍できないのです。そうなれば読み手は洗練された人間しか残りませんが、その総数は大きく減ります。逆に異世界と銘打ってこの現実世界からトリップした~やらゲートを通って~になってくると読者の感情移入のしやすさのハードルががくっと下がるのです。そりゃあスタートが現実世界ですからね、あり得ないと知っていてもその世界にのめり込ませる手助けには十分すぎるほどでしょう。さらにそれを引き下げたのがゲーム及び仮想世界系です。あれは近い将来実現するぐらい身近ですからね、大ヒットした某ラノベもこの効果を知った上で世界設定を行ったのでしょうか。
まとめ:世界観にこだわりすぎて読者を置いてけぼりにしないようにしよう。また、位置関係やある程度の時間の移り変わりにも気を付けて描写しよう。作品の最初に異世界に入った的な要素を入れることで、より簡単に感情移入をさせられる上に、どんな不可能も可能に出来て、矛盾点の言い訳もしやすくなる。
次回:タイトルと売り文句
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