橙色の街灯
私の住んでいる町内の交差点に新しく橙色の街灯が設置されたのは三年ほど前でした
それまでも往来には白色の街灯が等間隔で立っていて、この交差点の周囲も結構明るかったのですが静かな住宅街の事、物影も多く物騒なご時世でもあるため追加で設置されたようです
この橙色の街灯というのがたいそう明るくて、交差点の見通しも非常によくなりました
が、それから三ヶ月もしないうちから、その交差点では事故が続発
それも決まって真夜中でした
私も何度となく急ブレーキや衝撃音で起こされました
近所の人たちとみんなで
おかしいねえ、せっかく明るくなったのにね
などと話すこともありました
そんなある夜、ちょうど今ぐらいの春先の出来事です
私は駅前のお店で友達と飲んでいて、遅くに帰宅しました
夜中の一時ぐらいだったでしょうか。例の交差点で赤信号に捕まってしまい、酔い覚ましのつもりで夜風を浴びつつぼけーっとしていると……私の目の前に物凄い音を立てて赤い軽自動車が突っ込んできて、電柱に激突したのです
一瞬で酔いも覚め、慌てて駆け寄りました
その時にチラっと、橙色の街灯の下に人影が見えました
よかった! 他にも目撃者が居た!
と思って助けを求めようとすると、もう誰も居ませんでした
結局、同じ音を聞いた近所のおばさんが警察を呼んでくれて、私は運転手の若い男性(幸い軽傷でした)といっしょに警官の到着を待ちながら話を聞きました
いわく、急に橙色の街灯の下から人影が飛び出してきて、咄嗟にハンドルを切った
とのこと
私はその時ずっと交差点に居ましたが誰も通ってはいません
おかしいなあ、と思いつつその日は家に帰りました
翌朝、警察を呼んでくれたおばさんに会ったので事故の話をしました
すると、おばさんは前にもいくつかの事故を通報したり運転手や同乗者の話を聞いているようでした
井戸端事情聴取は
あの街灯が出来てから、事故が増えてねえ……
から始まって、人死にが出てないのが幸いで、ときて
しまいに
「みんな言うのよ、あの街灯の下に誰か居た」
って……と薄気味悪そうな顔をして、うーむと二人して唸っておわりました
結局、そのまま暫くして街灯は設置こそされていますが点灯しなくなりました
そしてハッキリと、あの交差点(我が家の南側の窓からすぐ見えます)での交通事故が減ったのです
これ以上の事は何もわかりません
なのでこれは私の推測なのですが、今も
「見えてないだけ」
なんじゃないかなと思います
あの街灯のせいで「見えすぎていた」のではないか、と
今でも、もしかしたら私が産まれるずっと前から、あの影はあそこにずっと立っていたのではないか
そんなことも考えてたりします
橙色の街灯は今日も点灯しないまま、交差点にぽつりと立っています
キッドさんの怪談シリーズ ダイナマイト・キッド @kid
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。キッドさんの怪談シリーズの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます