消えそうでいて、それでも決して上書きされない恋の物語ですぜ!

ラブストーリー。それは必ずしも現実と並行して走っているものだけではありません。
想い出の中だけを走り続けるラブストーリーだってあるのです。

遠距離恋愛って響きはロマンチックではありますけど、実際に当人同士にとっては、ほとんどが寂しさをあえて隠しながら逢瀬を楽しむだけで、むしろ別れ際が辛いだけかもしれません。

手を伸ばせば届く距離にいてくれるのなら、「喜怒哀楽」を互いに確かめ合うことができます。でも離れていて決まった時間にしか逢えないのなら、「怒」や「哀」を話したり聴いたりすることは封印されてしまいます。だけど本当に話したり聴いてほしい事って、「怒」と「哀」の比重が大きいのではないかと思います。

月夜野という地名がどこか幻想的に、この物語を彩ってくれています。

昔のラブストーリがまだ心の中から消去されておられないならば、ぜひこの掌編をご覧ください。

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