なにわのカクヨマー
川上 神楽
とってもキュートな神楽さん
ふやけた食パンのような大阪府の地図を上下に真っ二つに分けて、大体上半分を「北大阪」それから下半分を「南大阪」と呼ぶ。川上神楽先生も大体「南大阪」と呼ばれる地域に生息しているのだけれど、大阪というのは南に行けば行くほど方言も煩雑になり「河内弁」やら「岸和田弁」やら「泉州弁」やらと呼ばれるどぎつい関西弁もあり、さすがの神楽先生も
カクヨマーとは書いたり読んだりをこよなく愛する人の総称である。皆さんもご存じの通り「カクヨマー」として知られる神楽先生なのだけれど「実はただの暇人なのではないか?」なんて思う方も多いのではないか、なんて助手である私も心配で今、ハッピーターンを食べながらこれを書いているのだけれども、いやいや実際はそんな事はなく、かの有名な大阪マッターホルン大学(マツ大)で教壇に立つ物理学研究の権威としての顔を持つ事実は意外と知られていない。大阪に来られた事がある方なら一度は眼にした事があるであろう「2階建てタクシー」その開発チームを指揮したのが何を隠そう川上神楽先生その人なのである。
2階建てタクシーとは、1階部分に4人、2階部分に15人座れるシートがある異様に上半分のみが、くにくにと出っ張った大阪名物の乗り物で宴会帰りの団体客が一同に乗車出来る利便性に富んだタクシーなのだけれど、あまりのくにくにさに驚かれる県外からの観光客も多く、各種観光ガイドにも特集記事が掲載されるほど有名なので今更説明するまでもないでしょう。大阪に来られた際にはぜひ一度、ご利用頂きたい。
もっと身近なところで言えば「リバーシブルたこ焼き器」これは関西の方なら一家に1台お持ちである方も多いくらい普及している神楽先生の大ヒット発明である。表の面では「たこ焼き器」として外はカリッと、中はふんわりと焼き上がるたこ焼き器なのだけれど、普段は裏面の「ティッシュケース」を利用している方が多いのではないだろうか。つまり表はたこ焼き器、裏はティッシュケース、すなわち「リバーシブルたこ焼き器」なのである。
と、ここまでハッピーターンを食べながら神楽先生を紹介させて頂いたのだけれども、根本的に勘違いをされている方も多いのではないか、と思い訂正させて頂きたい。川上神楽先生の事を「カワカミカグラ」と読み間違われる方も多いのだけれども実は「カワジョウシンラク」と読むのが正しい。「円楽」「行楽」「神楽」で有名な「なにわの発明王・三大楽」の一翼を担っているのだ。そんな事よりも何をハッピーターンなんぞ喰いながら書いとんじゃ、どあほう、との声も聞こえてきそうなので先に進めさせて頂くに
そんな神楽先生の1日を紹介しよう。まず神楽先生が起床すると真っ先に洗面台に向かい「ふたまた歯ブラシ」で丁寧に歯を磨く。この「ふたまた歯ブラシ」も神楽先生の発明品なのであるが、先端にブラシ、反対側の柄の部分の先端に爪楊枝が付いている特殊な歯ブラシなのだけれども、購入して即、爪楊枝だけを取り外す購買客も多く、正直この商品だけはヒットしなかった。神楽先生の最大の汚点であるのだが歯ブラシの柄の部分に、そんなつんつんしたものが取り付けられていたら、手首を怪我して危ない、至極真っ当な意見だろう。
しかし神楽先生、自ら発明した「ふたまた歯ブラシ」を使いご丁寧にも爪楊枝装着のまま、ゴシゴシ歯を磨く。当然、手首の部分はつんつんするのだけれど、そんなのはお構いなし、つんつんしながら、ゴシゴシ、つんつんしながら、ゴシゴシ、つんつん、ゴシゴシ、つんつん。当然、つんつんになった神楽先生の手首には薄っすらと血が滲んでいるのであった。それから朝食の「冷凍麦飯」を喰らう。これも言わずと知れた神楽先生の発明品だ。「玄関開けたら2分で麦飯」のCMでお馴染みの方も多いので簡潔に説明させて頂くが、これは真空パック入りの麦飯で、電子レンジでチンすれば2分で旨い麦が喰えるのだけれども、実際には玄関を開けてから電子レンジに辿り着くまでに2分以上要するのであり、それに大体において電子レンジは「チン」ではなく「ピー」といった電子音が流れる商品が多いのであるが、そんな世俗的な製品ではなく神楽先生の研究所の電子レンジは本当に「チン」と鳴る。そして無心に麦を貪る。
麦を貪った後、神楽先生は研究室に入るのだけれども遠くから眺めていると、一向に研究をする気配がない、というか一体何を研究しているのか助手の私ですらわからないのだけれども、柿の種の「ピーナッツだけ」を食べながら傍観しよう。
お、さっそく神楽先生、白衣のポケットからスマートフォンを取り出した、果たして読むのだろうか、それとも書くのだろうか、神楽先生は雷の夜にしか書かない事は周知の通りだ、おそらく読むのだろうけれど、そんな事よりもピーナッツは美味い、というか私は辛いものは苦手であり、だったら最初からピーナッツの大袋を買えばいいのだけれども、どこか安く買えるところ知りませんか、どなたかご存知ないでしょうか、って何をひとりでぶつぶつ言うとるんや。
そうこうしている内に神楽先生はスマートフォンをポケットに仕舞い、何やら書類を書いている、一体何を書いているのだろう、きっと難しい論文か何かだろうな、と覗き込むと「さっしー」と書いていた。よく眼を凝らせば神楽先生のデスクの上には国民的アイドル・グループの同じシングルCDが山積みになっている、そうだったのか、大量に応募券を投票していたのは神楽先生だったんだ、それは驚愕の事実である。
「これこれ、ワトスン君、さっきからスマホで何をこそこそと書いているんだい? まさかいつでも気軽に読めて、いつでも気軽に書ける便利なサイトに投稿するんじゃないだろうね?」
やばい、神楽先生に見られてしまった、これはヤバイぞ、絶対にラップで威嚇してくる、神楽さんのラップが始まってしまう… 的確に韻を踏まれてしまう… その前に… 後ろ手にスマートフォンを隠した私は「公開」ボタンをポチっと押したのであった。
※この物語はフィクションです。
なにわのカクヨマー 川上 神楽 @KAKUYA
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