終わりゆく日を想う、繊細なSF

皆さんは、無線通信をしたことがあるだろうか。
科学の実験で、あるいは少し奮発して買った鉱石ラジオ作成キットで、肉声の聞こえない隔たった場所から、無線に乗せて言葉を飛ばす。
音声はノイズ交じりで掠れている。使える波長は本当に弱弱しいもので、時には波長を間違えて聞こえなくなる。何度も何度も言葉を重ねて、波長を合わせ、それでも何かの拍子にぷっつりと途切れる。
この物語は、そんなノイズ交じりの無線通信のように、繊細で、だからこそ愛しい物語だ。
この物語を読みながら、どうか終わりゆく日に昔日の美しさと哀愁と情念を感じ取ってほしい。それもまた、物語ならではの輝きなのだ。

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