見上げればそこにあり、近くて遠い場所

 1話完結の短編小説です。
 淡々と紡がれる言葉にどれだけの想いがあるのか、胸を打たれます。
ラストシーンまで、すっと心に染み入るようでした。




 全編を通して主人公の1人称視点で書かれていますが、無線通信機で相手との会話を行います。携帯電話のような完全な相互通信ではないため、交互に話をする必要があります。「どうぞ」という言葉で会話を締めくくり、相手の反応を促すのです。つまり、あまり長時間一方的に会話はできません。
 それが妙味で非常に味のある文章になっています。

 最初に「CQ」という言葉が出てきますが、これは不特定多数の人に呼び掛けるサインです。「CQ、CQ、CQ」と3回繰り返すのは1回だけではわかりにくいから、3回繰り返すようになっています。興味のある方はアマチュア無線で検索してみてください。

 このことから、当初主人公は誰か不特定多数の人に呼び掛けていることが分かります。
 
 それを踏まえると、ラストシーンでどのような想いを抱いているのか、改めて考えさせられます。

 素晴らしい作品でした。

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