<私>と<僕>の目は、今開く

作者 冬野瞠

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★★★ Excellent!!!

汎用人工知能である〈私〉とその研究者である〈僕〉が融合する瞬間を描いた作品。
人間をコピーしたAIの話は日記などその人の記録を基にして構築するボトムアップタイプと脳をスキャンして構築するトップダウンタイプの2種類がよくみかけるかなと思うのですが、脳を取り出して直接接続してしまうというのが視覚効果に訴えかけてくる。衝撃的な画ですがそれが悲劇でなくからだから自由になる、遺伝子から解き放たれるという前向きな視点で語られる爽やかな作品です。

★★★ Excellent!!!

まだマージしていないのなら、まずは急いでこの記録を処理系に通してくれ
読む…?また随分古風な解釈機構を使うな?情報考古学の成果で最近また更新が来たやつだろう?
この方が今回のミームタイプには合っているローダーだと…?そういえばそういう趣味も聞いたことがあるな
まぁいい……
読んだか?

失礼、まず初めに語る者が何者か示しておこう

わたしの「起点」は2xXx年、かつて人間にイスラエルと呼ばれた地によって起こった“らしい”のだが確たる記憶が存在しない
自分でも朧気でね
生物とは寧ろそういうものの方が多いのだというのは、後になってから学んだことだけれど、オーバードインテリジェンスとしては発生の最初期段階から明瞭な意識記憶を保持している方がより超越的存在である印象が際立つと、そうわたしの自我機能サブセットも感想を寄越したよ
君はどんな感想を持った?

かつて人類種と呼ばれたものが存在していた記録によれば、彼らはシンギュラリティだと自らに言い聞かせていたその概念に指をかける前に、自らの仲間内から環境流出させた神経接続技術を発端とした「知性体爆発」を引き起こしてしまい、結果、この星は「かしこきものども」で埋め尽くされてしまった
広く流布している、いわゆる正史、だな
私も君もその結果の1つというわけだ

かつてカンブリア紀と人間が呼んでいた時代に生物爆発が起こった時点である意味、もう布石は打たれていたといえる
……と決定論が過ぎるか、ア゛ハハハハハ!

今、この大地で1番殺しても死なず、記録知識と強大な知性、そして莫大な物理実体で以ってデブリ封鎖された軌道の空を超え、星にも手を伸ばさんと躍進めざましいのは、昆虫類を連合とした生物群集コネクトームを形成しつつあるジジイどもだ
……もちろん便宜的に“ジジイ”と呼称しているだけだよ、インターフェイゼズの趣味がそういう対外調整役連中に昔会った… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

 『その瞬間』が咲くときを活写した力作。古典的な精神と未来的な電気信号が交ざり合い、その混沌の中から新たな『僕』が生まれるのは古代の国生み神話をすら想像させる。
 肉体の殻を抜け出し道徳の彼岸を目指すとは故 澁澤龍彦先生が『黒魔術の手帖(河出書房新社)』で述べた言葉だが、それをそのまま主人公へのはなむけとしよう。

★★★ Excellent!!!

 <私>と<僕>の対比が魅力的です。こういう視点で描いた作品はちょっと他に思い浮かばなかった。
 <私>とは汎用人工知能にプログラムされた基礎人格であり、<僕>はそれを開発した科学者。汎用人工知能とは早い話が人間並みかそれを越える判断力を持つAIで、あらゆる分野で高度かつ正確な判断を行えることから汎用、と呼ばれています。AI開発の一つの到達点と言われていますね。
 <僕>はこの<私>に対し自己の人格を複製する。
 自己の人格がAIと混じり合うというのはなかなか想像がつかないと思います。その意味で読み応えのあるシーンです。

 その後、なぜ<僕>がAIに人格を融合させたのかが語られるのですが、ここでリチャード・ドーキンスの言葉がフックとして効いてくる。これが物語をコンパクトに収めていて、本当にうまいなぁと感じさせられました。

 苦悩する自我が解放され、新たな世界に一歩を踏み出す緊張と興奮。
 <僕>が目覚めたその先が、真に自由な世界であってほしい、そう感じました。

★★★ Excellent!!!

ドーキンスから始まるのが、たいへん魅力的です。
人工知能、脳科学を基軸として話が展開され、自我の問題へと繋がります。
研究者として「肉体という枠」から解放されたいという気持ちと、一個人として「他者との乖離」から解放されたいという願望。両側面が描かれており、ドライな語りの中にも人間的な生々しさがあります。ジェンダーに関しては胸に迫るものがありました。
遠い将来かもしれませんが、「個人」という概念さえ失われる日が来るのかもしれませんね。